茶一郎

ウィッカーマンの茶一郎のレビュー・感想・評価

ウィッカーマン(1973年製作の映画)
4.0
 それこそ今すぐ千鳥のお二人に島ロケしてもらいたい「変態島」を舞台に繰り広げられる捜査線、ミステリー。
 少女捜索のために敬虔なキリスト教信者である警察の主人公が下り立った島は、昼は露出狂と思うほどの裸の女性だらけ、夜は野外で行為に及んでいる大量のカップル、小学校では「木は男根の象徴だよ!」と過剰な男根崇拝が根付いた異様な島でした。

 この『ウィッカーマン』がカルト的人気を誇っているのは、ヨーロッパの宗教問題を見事に織り込んだストーリーというより、変態島の描写とそれを描くための語り口自体が「変態」という事にあるように思います。
 TSUTAYAの「ホラー」の棚に置いてあるとは思えない妙に温かみのある画で、変態島の変態たちの日常を他所者である主人公の目を通じて語っていく。
 所々で挿入されるフォーク音楽調の謎の島歌は、『ウィッカーマン』という作品自体をホラー、ミステリーを越えた変態ミュージカルというジャンルに押し込みます。

 正直、終始大爆笑で、白眉は結婚するまで貞操を守りきるという固い決意を持った主人公の元に変態島の金髪美女が夜這いを仕掛けるシーン。ここで金髪美女が歌を歌うのも意味不明ですが、誘われている主人公の悶え表現も「こんなのありかよ」と思わず吹き出してしまいました。

 閑話休題。やや変態的な語り口のホラー、ミステリー『ウィッカーマン』。しかし最後にはしっかり本作が宗教の物語である事を強調します。キリスト教と土着信仰の衝突。
 ネタバレ厳禁な最後のドンデン返しは歴史上において、消えていった文化の反逆と見えるのが面白い所。とにかくクセが強いんじゃ『ウィッカーマン』。
茶一郎

茶一郎