このレビューはネタバレを含みます
ところどころで垣間見えるそこはかとないユーモアや、ストーリー展開の妙など、ペドロ・アルモドバルの説明不可能な魅力は健在である。
なんだけど…。
ぺネロぺ・クルス扮するライムンダの娘のパウラが、父親のパコに襲われそうになって、威嚇するだけのつもりが誤って殺してしまう。
なんていうとんでもないことが起きてるはずなのに、危機感も緊張感も緊迫感も切迫感も焦燥感も悲壮感も、あとなんだ、えーと…、とにかくなーんもない。
これがラテンのノリなのかと驚いてしまう。
そして死んだはずのライムンダの母、イレーネの登場である。果たして彼女は幽霊なのか幻か?
見ていてとても混乱する。
あれやこれやてんやわんやの末にライムンダとイレーネは和解し、家族の絆の大切さにフォーカスしたところで大団円を迎える。
うーん安直。
先に述べた、旦那(パコ)が娘(パウラ)に殺される原因となったことが、母(イレーネ)と娘(ライムンダ)の軋轢に大きく絡んでくるので、そのエピソードはあってしかるべきと思う。
しかし、である。
人が一人死んでるのにラテンのノリでさらっと流していいことではない。
ペネロペ・クルスは美しいけど、姉や娘とは似ても似つかない。いや、似てる役者をキャスティングしろと言っているわけではない。平たくいえばペネロペ・クルス以外に花がなさすぎなのだ。
大筋では面白い。けれど色々とツメが甘い。
そんな印象。