Growltiger

キクとイサムのGrowltigerのレビュー・感想・評価

キクとイサム(1959年製作の映画)
5.0
邦画には珍しく人種差別について扱った本作。重たいテーマだが天真爛漫なキクと、無垢でやんちゃなイサムは時に笑いも交え、かつストレートに当時の様子を描いている。
差別は無知から生まれると言いうが、当時まだ外国人が珍しい時代。嫌でも目立ってしまった事は容易に想像がつく。

キクの顔をジッと見つめ目があうと知らん顔して行ってしまう人。「日本語喋れるんだな」とヒソヒソ話す人。
悪意は無いのかも知れないがそういう一つ一つにキクの心は傷つけられる。
見ていて辛いシーンもあるのにそれを辛いだけにさせないのはキクの天真爛漫さや純粋さのおかげだろうか。
写真を撮られる時に恥ずかしくてアッカーベーをしてしまうキク、アイスが欲しくて貰ったお駄賃で櫛を買うキク。そんな姿がなんとも可愛い。
アメリカへ養子へ行くのが良いのか、貧乏暮らしでも大好きな婆ちゃんと暮らすのが良いのか、当時の時代背景を考えると本当に答えは難しく見る度に考えさせられる。

主演の子らはやはり当時同じような経験もされてきたようで、キク役の高橋エミ(高橋恵美子)さんは後のインタビューで「最初は撮影が嫌だった」と答えていた。
だからあれだけ自然な演技ができたのだろう。
肌の色だけでなく、同級生より身体が大きい事を気にしたり、祖母(北林谷栄)から弟より怒られる事の不満などその年頃の子供の悩みは共感しやすい。
そういえば祖母役の北林谷栄さんはあれで当時まだ40代だったのだから驚き。どう見ても田舎の老婆(褒め言葉)。
厳しさの中に優しさのある素敵なお婆ちゃん。
中盤とラストは涙なしには見られない。

古いのに加えて東北の方言で聞き取りにくいシーンもあるが、多くの人に見てほしい。
今のところ自分の邦画No.1