砂場

ハナ子さんの砂場のレビュー・感想・評価

ハナ子さん(1943年製作の映画)
4.3
戦時下の異色のミュージカル映画、
ここから現代人は何を読み取る???


ーーーあらすじーーー
■ハナ子(轟夕起子)は父(山本禮三郎)、母(英百合子)と東京郊外に暮らす。馬術が趣味の五郎(灰田勝彦)は婚約者。
■五郎のボーナス支給日に家族を食事に招待するが父も母もお金は大事だからと辞退する。五郎はボーナスをもらったのだが現金ではなく戦時国債だったので食事会はなくなってほっとする。
■ハナ子たちは近所の子供達とかくれんぼをして、映画に行ったつもりなどつもり貯金をすることにした。最初は大人がかくれんぼなんてバカバカしいと言っていた父もこれには感心。
■五郎の妹チヨ子(高峰秀子)の恋人が足を怪我して復員してきた。家族とハイキング先で小さな結婚式をする。
■日独伊三国同盟の号外、沸き立つ人々。空襲警報、敵機襲来。花子の出産
■五郎にも召集令状が届いた、ハナ子は私に何ができるかしらと、でんぐり返しをしておかめのお面を頭の後ろに被るのだった
ーーーあらすじおわりーーー


🎥🎥🎥
⭐️先日『ダンスウィズミー』レビューで少し触れたマキノ雅弘のミュージカル『ハナ子さん』(1943)
いきなりのバークレー風オープニングに驚く

⭐️本場アメリカのミュージカルを日本でもということで轟夕起子や灰田勝彦を起用してマキノが撮った作品だ。
バークレーのような豪華さはないが軽やかなミュージカルとしてなかなか楽しめる。

⭐️しかしながら見ればわかるとおりこの時代ゆえに戦意高揚映画である。政府の検閲も激しかったらしくギリギリの制作環境だっただろう。
日独伊三国同盟の高揚感とか今見ると『スターシップ・トゥルーパーズ』的なブラックユーモアにも見えてしまうくらいの戦時の雰囲気を反映している。

⭐️それにしてもギリギリの範囲で軍批判とも取れる表現をぶち込んでいるのには驚かされる。
ボーナスが戦時国債で支給されてガッカリとか、一応笑う演出なのだが逼迫した財政状況を皮肉っている。
そしてラストのおかめの面の場面。徴兵される五郎を表面上は明るく送り出そうとするハナ子だが、唐突にでんぐり返しをした後にお面を取り出す。
Wikiによるとかぶって涙するシーンはカットされたとのこと。
ここには送り出す妻の心情が見事に表されていると思う

⭐️ミュージカル映画としては『鴛鴦歌合戦 』(1939)の方がシンプルにすごいと思うけど、この戦時下の『ハナ子さん』の明るい方にもブラックな方にも振り切った異様な感じはなんだろうかと考えてしまう。
ミュージカルを純粋に楽しめる時代になってほしいという切実なものを感じる
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