くわまんG

オルランドのくわまんGのレビュー・感想・評価

オルランド(1992年製作の映画)
4.0
あらすじ:400年生きて、幸せって何なのかわかった。

妖艶なる人外生命体ティルダ様としょっちゅう目が合って心臓に悪い、風変わりな伝記ファンタジー。

原作はヴァージニア・ウルフ。複雑かつ凄惨な生育環境にバイセクシャル、幾つもの生きにくさを抱えながらも、激しく輝いて散った希代の女流作家。『オルランド』は、ウルフの恋人がモチーフなんだとか。

1600年。名家の嫡男として生まれたオルランドは、惚れた美女を自分の所有物にしようとして失敗、男の人生に絶望する。

1750年。麗しのセレブ美女に生まれ変わったオルランドは、自分を所有物にしようとする男に出会い、女の人生に絶望する。

1850年。女一匹オルランドは、ありのままを愛してくれる男に出会う。男を愛し、女を愛した(女の悦びを知った)が、(二人が幸せになるには)結婚は不要と悟る。

1992年。一人間オルランドは世界と折り合い、世界がオルランドに追いつく。392年かけて性の壁を乗り越え、ついに幸せを得た。

…という女性神話。

原作では「アイデンティティを確立した上で、自らすすんで家庭に入る」という結末。同じ“家庭に入る”でも、「女は家庭に入るものだから」とは心境が真逆であり、大切なのは心持ちであることが伝わるプロットになっています。

円環構造になっており、やっぱり原作の方がウェルメイドなのですが、1992年のリテラシーなら、映画の結末の方が受け入れられやすかったでしょう。時代を百年も先取りしていたウルフの価値観に、改めておののきます。

時代考証にこだわった衣装や調度品は、ため息が出る美しさ。日々救いを求めて内省葛藤している、観客の記憶に同調するような演出も感動的(敷地内迷路を遮二無二駆け抜けて新展開に突入する…など)。そういう意味では、超遠大なロードムービーとも言えそうですね。