あきらむ

トランスアメリカのあきらむのレビュー・感想・評価

トランスアメリカ(2005年製作の映画)
4.5
心臓が掴まれるような思いで見た。結局性別とは、性嗜好とは何なのか、健全と不健全の境は?穴に落ちていくように分からなくなる。人が目を背けたくなる問題を冷たく時に暖かく真っ直ぐに描いているから、ずーんと心臓に来た。終わり方もなんだかリアルで、父(母)と子の関係にはまだまだ課題を残しているのが目に見えていてgood。実際にこういう状態にいる人を知っているため余計に複雑な気持ちだ。主人公を取り巻く家族や息子は、どこか壊れている。しかし根本的にいい人なのだ。ただ複雑でわけのわからない状況に気持ちの整理を付けるのが怖いから、向き合わないで拒絶している。主人公は壊れていない。壊れて壊れて乗り切った人だ。そして、今までは自分に精一杯だったけれど、これからは周りのことにも気が付ける人間になっていくだろう。なぜなら、それは「女になる」「男になる」が人生の大きな目標となってしまったが故に生まれた鈍感さと自己愛から生じたものだっただろうから。