アニマル泉

子猫をお願いのアニマル泉のレビュー・感想・評価

子猫をお願い(2001年製作の映画)
4.0
高校を卒業して社会に出た女子5人の群像劇を瑞々しく描くチョン・ジェウンの処女作。蓮實重彦が「映画の歴史を揺るがせる稀有な処女作」と大絶賛している。正直に言ってそこまで映画的感性が振動しなかった。どうしたのだろう?戸惑うばかりだ。5人の事情は異なる。証券会社の非正規スタッフになったへジュ(イ・ヨウォン)以外は就職出来ない。実家のサウナ風呂を手伝うテヒ(ペン・ドゥナ)貧困家庭のジヨン(オク・チヨン)道端商売している双子(イ・ウンシル /イ・ウンジュ)と実は会社で上手くいっていないへジュのそれぞれの孤独が描かれていく。チョン・ジェウンは説明を排してエピソードを淡々と積み上げていく。大きな物語はなく日常が幾重にも引き延ばされていく。ここは蓮實重彦が鋭く指摘しているとおり「時間という厄介な運動を導き入れる」ことに成功している。停滞する日常への時間の導入。もはや冒頭の高校時代の無償の友情は喪失して、それぞれが自分の人生を歩き出していく運動が始まる。セリフや芝居で段取りを説明することは排して、鮮やかに5人の青春を切り拓いている。
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