滝和也

座頭市の滝和也のレビュー・感想・評価

座頭市(2003年製作の映画)
3.6
お前と合った仲見世の
煮込みしかない
クジラ屋で…

浅草芸人としての
挟持と才能と。

「座頭市」

北野武監督作、ヴェネチア映画祭銀獅子賞に輝く往年の時代劇のリメイク作品です。按摩の市はある宿場に流れ着いた。だがその宿場はヤクザと豪商が牛耳る街だった。家族の仇を探す姉弟、用心棒に落ちていく浪人夫婦らとの運命が交錯し、悲しみが満ちた時、市の仕込み杖が抜かれる…。

冒頭は紅白でお馴染み「浅草キッド」です。30年以上前の曲ですが、ずっと大好きな曲です。この歌はたけしが浅草の売れない芸人時代を綴った内容。北野武監督がストリップ劇場のストリップの幕間に行われたボードビルの出身なのは有名な話。

今作ラストのタップダンスが有名になっていますが、たけしにとってタップダンスは浅草芸人時代から大事にしていた芸なんでしょうね。彼自身も踊れますし、確か軍団にもやらせていたはずですから。かなり唐突なインサートでしたが、インド映画なら当たり前(笑)。海外向けかもしれませんが。

また今作の作製理由に浅草の母である、ストリップ劇場の館主の言葉があったのも事実。大衆演劇の香り、浅草喜劇の香りを残すのも北野武のビートたけしとしての挟持なんでしょうね。

また北野監督らしさとして、静かなる世界に散りばめられたバイオレンス表現が今作も売り。蒼き清浄なる世界に赤き血飛沫が舞う殺陣。黒澤明の椿三十郎へのオマージュ、用心棒や七人の侍の影響も色濃く受けています。勿論勝新の殺陣に叶う訳はないので、アイデア、テクニックでカバーしていますよね。バイオレンス表現を黒澤明が北野監督のデビュー作を褒めていたコトも思い出されます。

昨今、ゴタゴタ続きのビートたけしさんですが、紅白での歌唱で潮目が変わって、何とか北野武として創作に戻って欲しいものです。

最近涙腺が弱いようで、浅草キッドを聞くとボロ泣きです…。いつか売れると信じてたの歌詞が刺さります…。
滝和也

滝和也