「どこにいても孤独が俺の人生につきまとう。バーでも、車中でも、歩道でも、店でも、どこでもだ。逃げ場所はない。俺は孤独な人間だ」
26歳のベトナム戦争帰還兵、トラヴィス・ビックル。
彼はニューヨークで何とかタクシードライバーの職に就き働き始めたばかりだが、犯罪の蔓延る汚れた夜の街は彼を蝕むようだった。
そして、不眠症の孤独な男が夜勤明けにやることは、ポルノ映画館に通うこと、日記をつけることくらいしかない。
彼はある日、選挙事務所で働くベッツィという女性に目を奪われる。
積極的なアプローチのお陰で彼女に好意をもってもらうが、初デートで悪気なくポルノ映画に誘ったことで嫌われてしまう。
彼女の怒りが理解できず、二人の関係修復も叶わず、再び孤独に陥るトラヴィス。
どうしようもない彼の人生を変えることは難しそうだった。
そんな中、街で幼い売春婦アイリスと出会い、彼は世の中に怒りを覚える。
不法に銃を手に入れて射撃訓練を行ない、身体を鍛え上げ、ある計画の準備を進めるのだった…。
ジャジーな音楽に彩られた詩的な映像で見せる、孤独な青年の心の闇の物語。
金色のネオン、ピンク色の壁、都会の暮らしは底無しで、眠れない夜…。
泉谷しげるの歌の一節が思い起こされる。
淡々と描かれる青年のやるせない心の内面は理解しがたい部分が多いが、何故だか共感できる部分も併せ持っており、ロバート・デ・ニーロの演技力と存在感と相まって、そのキャラクターは観客の心を掴んで離さない。
ラスト間際の問答無用の銃撃シーンも、現在のアクション映画のような派手さは感じられないが、返り血や怒号、カメラアングルなど、その緊迫感と臨場感は忘れられないものだ。
そして、トラヴィスの怒りと反逆の発露であるモヒカン姿は、今見てもやはりアナキズムのアイコンだった。
ハナマル!
2022/06/27