mimitakoyaki

タクシードライバーのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.4
この映画は、70年代の作品にもかかわらず、今見ても現実味があり、主人公の孤独や自分と分かり合える人を求める気持ち、独りよがりな考え、孤独と疎外感から抜け出せずにうまくいかない苛立ちを他者に向けてしまうあたりは、無差別犯罪なんかでよく耳にする事と同じて、今の時代においても、全く古く感じないどころか、とてもリアルに感じてしまいました。

………………………………………………
2回目: 2019.10.26

「ジョーカー」関連で久しぶりに再見しました。
なるほど、トラヴィスとアーサーの類似点や日記、ジョーカー内でのオマージュ、同じ80年代初頭という時代など、関連性を感じました。

ジョーカーのアーサーは、社会の底辺に追い込まれ、社会から見捨てられ嘲笑され見下され、誰からも当てにされずに孤独で、それが臨界点に達してジョーカーと化したという点で、本作のトラヴィスは、はじめから世の中や人々に対して嫌悪や恨み、怒りをそもそも持っていて、相手の気持ちには無頓着で、思い通りにならないと一方的に憎悪を募らせ暴走するので、アーサーと比べると共感も同情もできないです。

ですが、物語の冒頭で、トラヴィスは毎晩不眠症で眠れない事から、夜間にドライバーとして働こうと、タクシー会社に入社を申し込みに行き、その面接で、ベトナム帰りであり海兵隊にいたと言うと、タクシー会社の社長が急に親しみを感じて採用するというくだりがあったので、トラヴィスはベトナム戦争で生きて帰還したものの、PTSDで不眠や情緒不安に陥ってたのだと思いました。

「ノーカントリー」でも、ベトナム帰還兵と分かるや否や、過酷な戦場で戦い生き残った者同士の連帯を示すシーンがありました。
アメリカでは、ベトナム帰還兵がPTSDの問題も抱えて、アルコール依存や強い衝動性などもあり、社会復帰ができず、戦場に行って国のために戦ったのに、戦後は冷遇されて貧困やメンタル疾患に苦しんだ人が多かったようです。

きっとトラヴィスもそんな1人だったのかなと思うと、トラヴィスもまたアーサーと同様に、国や社会、時代の犠牲者であるように思いました。

104
mimitakoyaki

mimitakoyaki