タキ

タクシードライバーのタキのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.6
たしかにトラヴィスのキャラクターは昨年の「ジョーカー」を思わせる。ニューヨークはまんまゴッサムだし分かりやすい正義感と悪を殲滅したい欲求にかられる姿はバットマンのようだった。
ほんの少しの運命の悪戯で犯罪者になるのかヒーローになるのか危うい狂気の綱渡り。このヒリヒリ感たるや。
ただ、今見るとベトナム戦争終結直後の当時のアメリカの空気感や苛立つ若者の閉塞感はわからないし、そもそも日本人には理解は難しかったかもしれないし、ともすればトラヴィスは厨二病を拗らせたまま大人になってしまった青年のように見えてしまう。それはそれでまた現代においてシックリきていて古さは感じない。
ラスト、新聞でトラヴィスの活躍を見てタクシーに乗車しに来たベッツィをサラリとおろす。バックミラーを覗くトラヴィスのキラッと光る鋭いまなざしからニューヨークのネオンサインが次々と流れてゆく。少女を救ったヒーローとなって仲間もできて平穏な日々を一瞬見せられていただけに狂気は終わってないのだとハッとする。ニューヨークとトラヴィスは運命共同体のように狂ったまま突き進んでいく。ほんの少しの希望とさらに始末が悪いことになるかもしれない余韻を残して胸がザワザワしている。
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