優しいアロエ

天国の日々の優しいアロエのレビュー・感想・評価

天国の日々(1978年製作の映画)
4.5
〈それでも、あそこは天国だった〉

 20世紀初頭。開拓途上のテキサスを訪れた人々は、期待と共にどこか不安げな表情を浮かべている。語り部の「代わりはいくらでもいる」というセリフの通り、彼らはアメリカンドリームの退廃的な一面をすでに背中で感じているのだ。

 しかし、テキサスの悠然とした荒野とバイソンやキジ、クジャクといった野生動物たちは、彼らを温かく迎え入れた。モリコーネの劇伴も牧歌的。オスカーに輝いた撮影もマジックアワーを待った遠景の一方、被写体に近寄るドキュメンタリックな趣がたまらない。

 だが、そんな天国の日々に突如として終止符が打たれる。イナゴの大群による蝗害。長閑に見えたテキサスの自然が彼らに牙を向いたのだ。夢を思い描いた地に隠された負の側面に人々は動揺し、思いもよらぬ顛末へと転がり込む。

 「映像詩人」の異名に違わぬ優美な語り口に、アメリカンニューシネマのような夢破れた哀愁が残る。ストーリーの繋げ方にやや違和感はあったが、テレンス・マリックとの出会いに相応しい傑作であった。
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