イペー

皆殺しの天使のイペーのレビュー・感想・評価

皆殺しの天使(1962年製作の映画)
4.0
"宴"ドレス!

メキシコ時代のルイス・ブニュエル監督による、奇妙で奇抜な不条理劇。

オペラを観劇後、ブルジョワ達は知人宅にお呼ばれしてディナー。総勢20名。
数多くいる使用人たち、適当な理由をでっちあげて帰宅。クビ宣告にも動じない。
これにはご主人様も、首をヒネるばかり。

とりあえず始まるパーティー。
居並ぶ名士、美男美女。
ステキな音楽、オシャレな会話、豪華な食事…さて、そろそろお開きに…のハズが、

"誰も、誰も帰らない‼︎"

あろう事か、皆が揃ってその場で就寝。
ご主人だけが、「何で帰んないの、コイツら…。」と困り顔です。
一夜明けて、ようやく異変に気づき始めるセレブ達。

あーでもない、こーでもない、と議論は続くものの、サロンの内と外を隔てる、目に見えない壁。

帰らない…のか? 帰れない…のか?
水や食糧も底をつき、深まる混乱。
セレブ達も本性を露わにして、エゴとエゴのぶつかり合い。
ついにはヒツジやクマまで登場、事態はどんどん不可解な方向へと…。

「何じゃこりゃ!」ですね、ホント。
執事の代わりにヒツジ、クマにクマっちゃうブルジョワジー…(至って真顔)

風刺や皮肉はスパイス程度、とりわけ難解な映画ではないにしても、ブニュエル監督の真意までは測りかねます。

ただただ面白いんですよ、純粋に。
特異な状況に投げ出された、紳士&淑女のアホーな行動、アホーな会話。
空腹だからって、紙は食べちゃダメだ…。
予想は気持ち良く裏切られます。

屋敷の外でも異常事態を察知した人々が騒ぎ始めますが、どっこい中には入れない。
一歩踏み出せば良い、でもその一歩が踏み出せません。
自分達が設定した常識の牢獄に囚われて、パニックに陥る人々。

動物たちだけが自由に行き来できる、というのも示唆に富んでいて…おっと、理屈に頼ると自分まで部屋から出られなくなりそうです。

「不条理劇」との前置きに、身構えての鑑賞でした。蓋を開ければ、上品でバカバカしい良質なコントの様。
そして悪夢は繰り返される…秀逸なラストシーン! こりゃ参った!

尖ったセンスで、古さは感じないと思います。変テコ映画を愛する方に、こっそりとオススメ。

…休日にDVD屋さん巡り。
レンタルで見かけないソフト発見、そして散財。
結果、お金が無いので部屋から出られない!
イペー

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