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小早川家の秋の10000lyfhのレビュー・感想・評価

小早川家の秋(1961年製作の映画)
4.0
高度経済成長期に入り変わりつつあった日本社会を背景に、一家の長の父と、義理を含む 3人の娘を中心とした「ややこしい小早川家」の家族ドラマ。巨大資本の台頭と家族経営会社の限界から、家父長制が揺らぎ、男たちのアレンジする結婚を拒否する義理の姉妹のシスターフッド、そしてカメオ出演の笠智衆のセリフが予見するベビーブームまで、当時の時代の変化を多角的にキャプチャリング。プラス、映画としても秀でた作品、ありそうで他にないかと。父と尾行に失敗した社員との、また父と長女との、漫才のようなスキットは爆笑ものだし、開放した障子の枠が連なる日本家屋内映像は均整と調和の美しさだし、小津シグネチャの安定感が心地良い。俳優陣も小津映画常連が多いが、小津レギュラーでない長女役の新珠三千代が、一人だけ違うオーラを放ち、強い印象を残した。劇伴の黛敏郎は印象派の影響が強く、この時期の名作邦画にはぴったり。父の大往生シーンで別室から聞こえてくる宴会曲は、彼が生前に歌っていたのと同曲かな?
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