過去がない…とはどういうことだろう?
観る前まではタイトルの意味を考えていたが、物語が始まってすぐにその理由は明らかになる。。
環境に恵まれない者が犯罪に走ったり、ヤケになったりするのは仕方ないと思われがちだけれど…
今作の主人公(マルック・ペルトラ)は、決して自分に身に降りかかった事を悲観して自暴自棄になったりしない。
毎度お馴染み、お役所仕事ゆえにとりこぼされた不運を嘆かず、ギリギリのラインで保ってるどころか余裕さえ感じさせる。
素敵な異性を見つけたら、すってんてんでもアタック、アタック!
生きていくのに必要なものの筆頭が、、あれなの?!いや、その後の展開を考えると正しいよね笑
そして、やっぱり人生に音楽は不可欠だ♫
たくましく生きることって素敵だなって思わせてくれるカウリスマキ作品の中の登場人物の面々。
どんな辛いことになっても希望を捨てず、淡々と生きる姿はまるで起き上がり小法師のよう。
救世軍で働くイルマ (カティ・オウティネン)もまた、男と出会うことで人生に彩りが。。
極力装飾を削ぎ落とした会話に、態度に、優しさが溢れ、生きている実感を持つことができる…。
すっかりカウリスマキ・マジックにかかった私は、気持ちの良いマッサージを受けているような気持ちになる。。
このままハッピーエンドへ進むかと思いきや、銀行でのハプニングからのまさかの展開…。
けれど、そこから色々あった後に町の皆が味方をしてくれて、大団円を迎える所が好き。
今、ここを生きる。
そんな時に過去は必要だろうか?
名前は必要だろうか?
何もかも無くした男の素晴らしい再生物語。
そして、無くす前より幸せになった男の物語。
"人生は何度でもやり直せば良い"
使い古された言葉だけれど、そんな事を考えた。。