きよぼん

まだまだあぶない刑事のきよぼんのレビュー・感想・評価

まだまだあぶない刑事(2005年製作の映画)
3.7
「ヤクザと家族」のパンフに、舘ひろしの代表作として記載されてるのは「あぶない刑事」「もっとあぶない刑事」「さらばあぶない記事」・・と、あぶない刑事ばっかりになってる。振り返ると、これってもったいなかったよな、と悔やんでしまう。その理由が本作をみるとよくわかる。

前作から7年ぶりに復活した本作は、気軽に観れるノリで笑いの成分が多く含まれた作品となっている。センスあるジョークはアブデカシリーズの持ち味。だけど派手な効果音が鳴ったり、小道具まで持ち出してのやりとりは、もはやジョークではなくコントだ。シリーズの世界観を壊すほどのやり過ぎ感は否めない。

そこをぐっとつなぎ止めてるのが、舘ひろしの吸引力なのである。ヒロインの原沙知絵とのムードあるやりとり、拳銃を構えたときの眼光、バイクに乗ったときにみせるアクション。ここまで「軟」の笑いが多いと、「硬」の部分のストーリーの展開が逆にうまくいかなかったりしてる作品が多い。この作品では館ひろしが、一人で「硬」の部分を引き受けて、それも説得力を持って成立させてしまっている姿に舌を巻く。アクション、役者が持ってる空気。どれをとってもスターといえる存在ではないか。

今の日本の役者を観ても、彼ほどの存在感、アクションのセンスを持った役者はすぐには出てこない。この人の代表作が「あぶない刑事」シリーズだらけになってしまったのは本当に惜しい。館ひろし主演で、もっとたくさんのアクション映画の傑作を作れるチャンスが、ここ30年邦画にはあったはずではなかったか。そこをなんとも悔やみたくなった。

ここまで書いといてなんだけど、この作品の笑いの要素。嫌いじゃない。ラストの舘ひろし、柴田恭兵、仲村トオルの三人のやりとりはいつまでもみたくなる。浅野温子と水川あさみの少年課新旧コンビのやりとりは楽しい。かつておじさん連中と溝を感じてた旧キャスト陣が年を重ね、若い世代とのジェネレーションギャップを感じるようになるなどといった長年続いてきたシリーズならではの面白さがある。ないものねだりで、あえていうとなんだけど、あぶない刑事がやり残したことのひとつに「世代交代」があると思っている。その面白さをシリーズが続くなら観てみたかった。

いろいろ文句をつけてきたけど、勢いがある作品なので一気に観ることができる作品。なんかんだで、やっぱりアブデカだ!
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