きよぼん

落下の解剖学のきよぼんのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.9
真実とはたどり着くものなのね(´д`)

夫の落下による死亡について、妻のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)は「わたしは殺していない」と言う。弁護士は「そんなことは問題じゃない」と答える。彼女が語ることよりも、法廷にいる人にどうみえるか?が重要であるという。彼女たちは無罪であるという真実を「つかむ」ために争うし、検察側は、これまた有罪であるという真実を証明しようとする。

喧嘩、物音、第三者の証言、物証、過去の記録。激論が交わされるのだけど、それは一方の視点でしかなくて「それってあなたの感想ですよね」というレベルに落ちていく。とても理性的なようでいて空回りしていうようにみえる。解剖学とタイトルにあるように、とても丁寧に事件を追っていくのだけど、これ解剖してもわからんでーということが続く。

それもそのはずで、もともと人間って矛盾したものが同居しているからだろう。彼女が夫を憎んでいたというのも、愛していたというのも両方とも彼女の中に存在する。どっちもウソじゃない。そこに裁判によって、一面だけの解釈と理由をつけるの無理がある。人間の心の中を数値化する機械でもあらわれないかぎり無理。そう考えるとやってること中世から進化していないんじゃないか?というのは言い過ぎか。

真実なんてわからんし、事実を並べられても、「え、これが自分なんですか?」と、自分でもわからないもんだと思う。それでも劇中の誰かが言ってたように「決めなきゃいけない」のだ。重要な鍵を握る視力に障害のある息子。真実なんて自分でもわからない。ラストは彼らはたどりついたんだと思う。ていうか選び取ったのか。

緊迫感ある法廷サスペンス。全くわからない妻役のザンドラ・ヒュラーの演技に注目の秀作!

・・・ですけどね、ここまで読んでくださった人、この映画観たくなりました??

実はこれ絶対観るべきです!というと微妙。観て損はなし。よくできた秀作でおもしろいことは間違いないんだけど、想像の範疇を超えてこなかった。インパクトはそれほど受けなかったのよね

なぜこれがパルムドールなのか?なぜ今この作品が注目されるのか?という理由が浅学の自分にはわからない・・・評論家の方が書かれたものも読んでみたのだけど、夫婦の力関係の現在的視点というのも今更ながら、という気もする。なぜこの作品がここまで激賞されるのかについては、ピンとこなかったな(´д`)
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