岩井監督作品にハマり、鑑賞。
[あらすじ]
中学時代から仲良しの女子高生2人組・花とアリス。
アリスが一目惚れした先輩を追いかけるうち、その隣にいる宮本を好きになった花だったが、アリスも彼のことが気になってしまい……。
[感想]
シスターフッド的青春映画の金字塔。
前評判の高さに偽りはなく、淡々としつつも、少し可笑しな日常描写が愛おしい傑作でした。
次第に絡まる恋模様と、その絶妙な顛末まで、とにかく最後まで、観ていて心地が良かったです。
[幻のショートフィルム版の存在]
キットカット発売30周年記念の短編映画が基となり、長編映画化されたという本作。
そのため、一体、そちらと長編版はどう違うのだろうと思っていると、ネスレの公式サイトで本作の短編版を発見。(文末にリンクあり)
折角なので、今回は、2作続けて、見比べて鑑賞してみることにしました。
[映画版は、新訳『花とアリス』]
2作品を続けて観ると、実は長編版は短編版に追加シーンを足しているだけだということが分かります。
しかし、これは単なる"かさまし"なのではなく、新たな映像によって、シーンの意味合いが変わってくるよう、工夫が凝らされていました。
例えば、本作で印象的だった「記憶喪失」という要素。
これは短編版には登場しなかった部分で、このギミックによって、同じシーンが新たな意味合いへと塗り替えられる部分は、かなりの衝撃でした。
他にも、「雨の中で踊るジャンパーの人影」の正体が明らかになったり、豪華な脇役が登場したりと、短編版→長編版の流れで観るからこそ、より楽しめる部分も多く、ぜひ、時間のある方は、続けて観ることもオススメしたいです。
ちなみに、映画版のみに登場するシーンで、一番のお気に入りは文化祭の演劇シーン。
『ジャングル大帝』という名前で、劇団四季の『ライオンキング』を再現する*という高度なネタが最高すぎて、笑いが止まりませんでした。笑
*かつて、『ライオンキング』は『ジャングル大帝』のパクリではないかと騒がれたことがある。
[明るいようでいて、残酷さも描かれた物語]
パッケージや予告編のイメージから、勝手に、ほのぼの青春映画だと思っていた本作ですが、実際に観てみると、シビアな現実も描かれていたのが意外でした。
複雑な家庭環境で育ち、少しずつ、大人へと近づくアリスや、親友関係にヒビが入るほどの三角関係を経験する主人公たち。
それらの描写があることで、淡々とした日常描写は、より愛おしく感じるのかもしれません。
特に、大人びた高校生・蒼井優さんと、病みを感じさせる鈴木杏さんの名演が素晴らしく、影が見え隠れするような彼女たちの存在感が、本作が持つ魅力を最大限に引き出していたように思いました。
[終わりに]
デビュー作『Love Letter』の思わぬヒットで、今や、日本のみならず、中華圏でも、仕事のオファーをされることも多くなった岩井監督。
(数多くのショートフィルムを手掛けたほか、9月には、中国で撮影した『ラストレター』の原点『チィファの手紙』も公開予定。)
そんな経歴を踏まえた今、改めて観ると、劇中の蒼井優が発する名ゼリフには、何とも言えない縁を感じたり。
なにはともあれ、様々な作品に影響を与えていることは確かな一作なので、青春映画好きは、もちろん、邦画好きは必見の一作だと思いました。
参考
実写版花とアリス|花とアリス殺人事件
https://nestle.jp/brand/kit/hanaari/jissya/
(幻のショートフィルム版はコチラ!)
蒼井優、鈴木杏、岩井俊二が登壇『花とアリス』Q&A|Hana and Alice - Q&A
https://youtu.be/ZA4DkR10gAA
(序盤のピリピリムードに、若干、不安を感じるものの、和気あいあいと質問に答える後半は、かなり良い。)