さうすぽー

ダークナイトのさうすぽーのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
5.0
自己満足点 98点

―Why So Serious?―

クリストファー・ノーランのバットマンシリーズ(通称ダークナイト・トリロジー)の2作目にして、彼のキャリア史に残る最高傑作!(異論は認めます)

レビューが300本目に達したので、自分の最も好きなヒーロー映画を書きました。

この映画を初めて観たのは自分が高校生の頃で、丁度続編の「ダークナイト・ライジング」が公開される直前でした。
その時の衝撃は計り知れないものでした。
1回目を観たときは落ち込んだりして疲れたのですが、それと同時に段々と込み上げる感動や衝撃があり、2回目を観たときに「何て面白いんだ!」と思いました。

ヒーロー映画でもあり、クライムサスペンスであり、人間の善悪を問う哲学的な内容ですね。

ストーリー、キャラクター、俳優陣、映像、音楽等、全てにおいて完璧だと思うのですが、この映画の魅力をいくつかに絞って語ります。

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①ヒース・レジャーのジョーカー

まずはここから語らないといけないですね!
いまやバットマンを知ってる方なら誰もが認めるヒース・レジャー演じるジョーカーですが、意外なことに上映される前はファンから不安視されてたそうですね。
確かに、それ以前のジョーカーはジャック・ニコルソンのイメージでしたし、ヒース・レジャー自身も硬派な役が多かったそうなので不安視されるのも理解できます。
しかし、「彼ならこのイカれたジョーカーを演じられる!」と確信していたノーランが一番凄いです!

それによって、あの怖すぎる白塗りメイクと様々なアドリブによって生まれた名シーンが完成されました。
お陰で彼は初めてアメコミ映画でアカデミー賞助演男優賞を受賞してますからね!
本当に惜しい人を亡くしました...

去年のホアキン版ジョーカーも良いですが、個人的にはヒース・レジャーを越えるジョーカーはありません!


② キャラクター描写の上手さ

バットマンは有名なアメコミヒーローの中でも「ヴィランに恐怖を与える」という、アウトローでダークな部分がありつつ、「人を殺さない」という優しくヒーロー然としたルールを設けています。
そこに物凄く惹かれます。
今回のバットマンは、ジョーカーに翻弄されて葛藤しながらも、自分のルールを全うする潔さは本当に感動します。

先程も触れたジョーカーについてですが、ダークナイトのジョーカーが名ヴィランと呼ばれてる理由はヒースの演技だけではありません。
ジョーカーが何者か解らないからです。
彼の行動理由は何なのか、次に何の行動をするのかが予想出来ないので、そこに恐怖を感じます。
だからこそ、あんなに狂気じみてカリスマ性の高い悪役になれたのだと思います。

また、もう一人のキーパーソンであるハービー・デントはバットマンのヴィランなのに、前半は「正義の検察官」として登場しますが、彼の悪に染まる過程が丁寧に描かれていて非常に興味深いです。

マイケル・ケイン演じる執事のアルフレッドや、ヒロインのレイチェル等のキャラ描写もしっかりと役割があるなど、ノーランのダークナイト・トリロジーはキャラクターの役割や描写が非常に上手いです!


③ 迫力のある実写映像

クリストファー・ノーランはハリウッドでも珍しい"CG嫌い"の監督として有名ですが、それが彼の迫力ある映像作りに素晴らしく反映されるのが特徴的ですね。

このダークナイトでも、トゥー・フェイスの顔以外殆どがCG無しの実写で撮影されていて、色々とクレイジーです(笑)

まず、中盤のド迫力のカーチェイスシーンは本当に車やトラックを横転させたり爆発させたりしてますし、病院の爆破シーンなんてまさか本当に爆破させるなんて誰もが思ってなかったでしょう(笑)

しかし、そのおかげで緊迫感も迫力もCGを駆使した他のハリウッド大作映画よりも格段に違うものになっています。


④ 人間の善悪を問う哲学的な内容

このテーマ自体は他の映画でも数多く描かれています。
去年の個人的ベスト10で6位に上げた「デイアンドナイト」やドゥニ・ヴィルヌーヴの「ボーダーライン」でも描かれています。
しかし、この映画を前にすればそれらの作品群は敵わないと今回見返して思わされました。

人間の「悪」はどこでどんな理由で起きてしまうのか、「善」を保とうとする心はどうやって持ち続けられるのか。
サイコパスのようなジョーカーの存在があることによって一気にひっくり返されてしまうところに恐怖を感じます。

きっかけさえあれば、ハービー・デントのような善人でも「悪」に染まってしまうし、逆に終盤の船内の人々のように「善」の心を保ち続けることも出来ます。

"悪"の中にも"善"はあり、
"善"の中にも"悪"が潜んでいる。

何故人は変わってしまうのか。
何故人の心理はこうも複雑なのか。

人間の本質について、つくづく思わされますし、観る度に考えさせられます。
だからこそ、非常に重厚でシリアスな内容なうえに終わり方も結構ビターで、おまけに上映時間が2時間半の映画ですが、テーマが深くストーリーも非常に面白く、終始ハラハラさせられるので全く退屈することなく観れます。


まだまだ語り足りない部分もあります。
警察やマフィアの生々しい描写や生々しい都市構造、そして素晴らしいハンス・ジマーの音楽等、上げればキリが無いほどです!

この映画があまりにも完成度が高過ぎて、後々DC映画は良くも悪くも影響を与えている本作。
DCユニバースは完全に本作の呪縛から解放されずにシリーズを失敗させてますからね(笑)
(まぁ、続編の「ライジング」や「ウォッチメン」、去年の「ジョーカー」はかなり頑張ってると思いますw)


ヒーロー映画の金字塔にしてクリストファー・ノーランの代表作!
本当に大好きな作品です!!(*^^*)