踊る猫

ベルリン・天使の詩の踊る猫のレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
4.2
十数年ぶりに観たのだけれど、思い出補正が掛かっていたらしくもっと傑作かと思っていたらそうでもなかった。もちろん駄作や愚作の類ではないのだが……天使と人間の恋物語として語るなら、削ろうと思えば削ってスッキリさせられるシーンが色々とある。だけれど監督の意図としては前半部での丁寧な市井の人々の心の中の呟きやベルリンという町の描写に依って、「日常」の掛け替えのなさ、「子ども」であることの神秘を表現したかったのではなかったか。ラストのバーでのふたりの会話が印象的だ。同じ監督の『パリ、テキサス』での張り詰めたやり取りを連想させる、単なる愛の告白に留まらない哲学的とさえ言える対話こそがキモなのだろうと思う。モノクロームの画面がカラーに変わる瞬間の息を呑むような美しさに注目されたい。
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