ペコリンゴ

デスカッパのペコリンゴのレビュー・感想・評価

デスカッパ(2010年製作の映画)
3.8
記録。
おバカ特撮が思い出させる熱き童心。あの日に帰る85分。

突然ながら、僕は少年の心を持ち続けている。そして恐らく世の大人男子は大概そうだと信じている。少年にはヒーローが付き物だ。ウルトラマン、仮面ライダー、ガンダム。男の子ならきっとこれらのどれかに熱狂した時期があるのではなかろうか。

さて『デスカッパ』だ。
タイトルからして馬鹿すぎるだろう。実際手に取ったのは定期的に摂取したいネタ枠だからだ。

でもね、僕にはこの作品を公正に評価することなんて出来ない。何故なら少年時代の僕のヒーロー、ウルトラマン(ウルトラシリーズ)へのオマージュが多すぎるからだ。

まず目につくのはキャストだ。
平田弥里、桜井浩子に星光子。歴代シリーズの女性隊員たち。星光子に至ってはウルトラマンAに変身するヒーローそのものではないか。

脚本は平成ウルトラ三部作で良エピソードを幾つも生み出した右田昌万。怪獣造形を手がけたのは第二期ウルトラシリーズの怪獣デザインを手がけ、昨年惜しまれつつこの世を去った開米栄三氏のご子息俊雄氏。いやもうお腹いっぱいだ。

かつて『帰ってきたウルトラマン』の同人作品を制作、今夏公開予定『シン・ウルトラマン』の制作も手がける庵野秀明が出演してるのも見所。溌剌とした演技は上手くないものの『風立ちぬ』よりは大分マシ。彼のキャラクターは『ウルトラセブン』第43話のオマージュだろう。

映画の内容としては…
ふざけてるのか、真面目なのか、或いはその両方なのか正直アレな内容のドラマパートは間違いなく残念。ギャグとしてもあまり笑えはしない。

が、僕にスコアを爆上げさせたのは特撮パートの素晴らしさ。ミニチュアこそ低予算なりに頑張ってるものの、戦闘機を吊るピアノ線(丸見え)、バレバレのスクリーン合成、香ばしい香りが漂ってきそうなミサイルの火薬など、あえて昭和特撮の手作り感を演出する粋な計らい。そこには先人へのリスペクトと古き良き侘び寂びを感じてやまない。そう、子供の頃に親にねだって見せてもらったのはこういうのだ。

ウルトラシリーズファン、とりわけ『ウルトラセブン』のような硬派な作品だけでなく、『ウルトラマンタロウ』のような少しおちゃらけた作風も許容出来る方はお気に召す可能性が大いにあるだろう。