アニマル泉

次郎長三国志 第三部 次郎長と石松のアニマル泉のレビュー・感想・評価

5.0
シリーズ第三部、マキノ雅弘の至芸を堪能する。前半が石松、後半が次郎長一家の話からなる。別れの場面が全ていい。冒頭の次郎長一家と石松の別れの場面は真っ直ぐなニ本道に別れる分岐点、コケながら走り去る石松(森繁久彌)がいい。本作の森繁はキラキラ輝いている。石松と投節お仲(久慈あさみ)の別れは橋、木漏れ日が差すまだらの影が美しい。追分三五郎(小泉博)とお仲の別れは山道、突風に舞う砂埃が奇跡的、九十九折の上下に離れての別れがいい。お仲の魔性の女っぷりが素晴らしい。賭場で全身で賽を投げる、投げっぷりが豪快だ。酔ってしなだれて石松に草履を履かせる場面は何とも艶やかだ。そして三味線の歌、なんだか西部劇みたいである。どもりの石松が何を言いたいのか三五郎には判る。三五郎は石松に「口ではなく目が大切」と諭す。それを素直に実行する石松も可笑しいが、このセリフは映画の真髄を言い当てているテーゼだ。本作は、風呂、滝、酒、水のイメージで彩られている。終盤の滝の茶屋のセットが素晴らしい。
一方で次郎長一家は賭場開帳で捕まり牢屋に入れられる。牢屋の場面がメインで尻叩きの長回しは痛そうだ。鞭打ちの刑もある。やたらと叩かれる映画だ。広沢虎造が狂言回しとなって活躍する。
エンディングに第四部の予告編が付いている。おそらくまとめて撮っていたのだろう。本作が制作された1953年にはシリーズの第ニ部から第六部までなんと5本も作られている。まさにプログラムピクチャー全盛期の豊かさである。
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