しゅん

コロッサル・ユースのしゅんのレビュー・感想・評価

コロッサル・ユース(2006年製作の映画)
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例の手紙(土産は10万本のタバコと/流行型のドレスが10着ほど/車も一台/お前が夢見る溶岩の家/心ばかりの花束/・・・)は劇中9回読まれる。ヴェントゥーラの娘or息子たちが語るそれぞれ物語の間を縫う手紙の反復の中で、固定カメラで撮られたショットの記憶が重なっていく。寝室、斜めに影のかかった壁と赤いイス、備え付けられた窓。ヴァンダによって言及されるテレビは一度も映されず、食卓の後ろに立つ地球儀と小ぶりのシャンデリアは何度も現れた。声が饒舌になるだけ、映されたものたちは見捨てられる。ボロボロの建物のように、妻に捨てられたヴェントゥーラのように。だからこそ、後半に突如わけもなく出現する、柔らかい日差しに染まる秋の森を映す、今まで全く動かなかったカメラの横移動の無言に、快活な優しさと新鮮な喜びを人は見出す。沈黙が生み出す力強い優しさ。最後、初めて二人きりになる祖父と孫。横たわる老人とはしゃぐ子供は何も語る術を持たないが故に、何かを伝えあっている。手紙に託された記憶を知るのは、きっとあの子なのだ。

・・・ちょっと詩的になりすぎた。でもこの映画の素晴らしさを伝えようとするとこんな感じになる。ペドロのことがだんだん好きになってきて、とても嬉しい。
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