Kamiyo

スケアクロウのKamiyoのレビュー・感想・評価

スケアクロウ(1973年製作の映画)
4.0
1973年  ”スケアクロウ” 監督ジェリー・シャッツバーグ
スケアクロウとはカカシのことであり、
ライオン(アル.パチーノ)は「カラスはカカシを恐れるか?
 違うんだ。カラスはカカシを見て笑っているんだ。
 そのおかしな顔と帽子の姿を見てね。
 そして言う、あの百姓はいい奴だ。
 奴の畑は遠慮しよう、って。」と語る。
相棒のマックス(ジーン.ハックマン)は頭に血が昇りやすい性格で
いつもいざこざを起こす。
そんなマックスにライオンは「お前もカカシになるんだ。」と言うが
マックスは変われるのか?
40年ぶりかで見たけど、こんなジーン・ハックマン
やっぱりこの映画の中でしかお目にかかれない。
マックス。心から愛すべきキャラクターだ。
アル.パチーノの若いよね。。。。”ゴッドファーザーⅠ”1年後らしい

なだらかな丘陵に覆いかぶさる鈍色の大空と砂埃混じりの乾風が吹きすさぶ枯れ色の草原。そんな荒涼とした大地をバックに、タンブルウィードが転がる道路を隔てて対峙するふたりの流れ者。
道端でヒッチハイクをして偶然出会う刑務所帰りのマックスと
元船員のライオン。
マックスは喧嘩っ早い性格だが洗車業で再起しようとしており、
ライオンは5年ぶりに妻子と再会すべく、電気スタンドのプレゼントを
大事に抱えている。彼らが旅をしながら友情を深めていく過程が
ストーリーである。

後半、一歩を踏み出せずにいたライオンを後押ししたのは
マックスであった。
酒場で喧嘩になりかけたところをあの強情なマックスがおどけて見せ、ストリップをするように一着一着を脱ぎ去っていく姿は、まさしく彼の変化そのものだ。
ライオンはそれを喜びつつも、遂に一人となったカカシとして
孤独を感じ、一歩を踏み出す決意をするが、
直面する現実は余りにも悲劇的である。

傷ついてボロボロになって向うライオンの妻のもと。
面と向かって顔を合わせることが出来ずに、近くから電話をかけます。
現状を尋ねると、妻は再婚し、放って出て行かれた
恨み辛(つら)みをぶつけます。
そして、妊娠していた妻は、無事に男の子を出産したにも係わらず
流産したとライオンに告げます。このショックたるや。。。狂う
マックスはライオンに「何があったんだよ!あの女に何を言われたんだよ?もう一度、あの公衆電話に戻ってやり直そうよ。
お前のほかに誰を信じていけばいいんだよ!」意識を失ったライオンに懸命に呼びかけるマックス。

アル・パチーノは全編通、まだ見ぬ子のプレゼンントをずっと持っているところがものすごく切なく、可愛らしくいろいろな感情を引き起こしてくれます。
暴走気味なパチーノを抑えた演技で受け止めるハックマンの存在感は、精神が壊れたライオンを支えていこうとするマックスの決意に重なるものがある。

切符購入のシーンが印象的。
ラストはマックスがやはり「抜けている」ことを示す
ユーモアで終わって良かった。
大金を受け取りに行くのだから、往復の切符に金が不足するからと
いって慌てる必要もないのだ。
それをわざわざブーツの底に忍ばせたなけなしの
10ドル札を取り出すなんて。

この作品は、ある意味唐突に終わる。
二人の絆の結末は描かれてないのだ。
だからこそ、観るものによって
二人のこれからの姿がいくつも考えられる。
でも、おそらくみんな同じようなことを考えるはずだ。
マックスが洗車し、ライオンがその車にワックスがけをしてる...
そんな生活をしてる二人になってほしい。
そして、そんな二つの「カカシ」を見て、再びカラスが笑う日が来て欲しいと思うのだ...。

ジーン・ハックマンとアル・パチーノの珠玉の一作。情景も美しいが、この二人の絆が美しい。 素晴らしいシナリオだ。
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