ひろ

その男、凶暴につきのひろのレビュー・感想・評価

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)
3.9
監督・北野武、脚本・野沢尚によって製作された1989年の日本映画。北野武映画初監督作品

芸人・ビートたけしとは別の監督・北野武が誕生した記念すべき作品。元々、監督・深作欣二、主演・ビートたけしだった作品だが、深作欣二監督のスケジュールが合わず、話題性を考えたプロデューサーにより、監督に抜擢される。

脚本から台詞を削りまくったことから、脚本家の野沢尚は怒ったらしいが、作品的にはその狙いが的中している。徹底したバイオレンス描写。台詞が少ないことが、物語の緊張感を高めている。より狂気的に感じる。これはバイオレンスを極めた作品。

個人的には過激なバイオレンスは苦手だし、この手の作品は賛否が別れるだろう。ただ、好みを別にして映画を評価するなら、ことバイオレンスの描いた作品としては、最高レベルの映画と言っていいだろう。ラストの描写には度肝を抜かれた。

俳優ビートたけしのシリアスな演技もこの作品で確立している。佐野史郎や白竜、岸部一徳などの個性派俳優の使い方もうまい。北野映画に欠かせなくなる寺島進が、チンピラ役で初出演しているのは時代を感じる。

元々、監督をするはずだった深作欣二監督もバイオレンスが得意だが、過激なバイオレンスを描く監督ほど、繊細で優しい人間だったりする。圧倒的なバイオレンスを観た人は、暴力に憧れを抱いたりしないものだ。北野監督のバイオレンスの裏にある想いを汲みながら観賞してみてもらいたい。
ひろ

ひろ