great兄やん

ツィゴイネルワイゼンのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)
4.7
【一言で言うと】
「現に夜這いし"幻想"」

[あらすじ]
陸軍士官学校で教授を務める青地と、かつて同僚の教官だった友人の中砂は、旅先で小稲という芸者に出会う。旅から1年が経ち、青地は中砂から結婚の報せを受ける。中砂の家を訪れた青地だったが、彼の新しい妻の園は、以前旅先で出会った小稲と瓜二つの女で...。

これまで沢山の映画を観てきた中で、極稀であるが映画そのものにおける範疇を優に超えた"藝術"を翫味する瞬間が訪れる時がある。まさにこれはその表現に相応しい作品であり、むしろこの稀代の作品をスクリーンで吟味できる経験が何よりも喜ばしい思いでいっぱいだった。勿論理解など到底出来得ないような作品ではあったが笑

鈴木清順監督の作品は初めて観るし、今作含めこの浪漫三部作における物々しい雰囲気に惹かれ何の気無しに観たのもあるが、まさかここまで美の臭気がツンと漂う作品だとは...いやはや、なんとも恐怖に近い夢見心地を味わう144分の愉悦でしたね🤔...

とにかく画作りの"美学"が最高に極まりまくってる。もはや言語を用いて説明するとか、論理的な思考を用いて理解するとかの要素をことごとく拒絶するかのような狂気的"美"に塗れており、ビビットで麗しい情景に目を奪われつつもどこか退廃的で艷やかな色気が臭ってきたりと、まさに目が魅惑に"絆される"瞬間が乱立した凄まじいシーンの連続でしたね…あんなの口で説明しようとしても、丸一日どころか丸一週間かかっても出来ないでしょうな(^_^;)...

それに原田芳雄の野性味あふれるキャラがもう最高にエロいし、粗野で狂言じみたセリフを並べ立てる掴みようのないキャラクターなのにも関わらずあの危険で毒々しい佇まいはまさに悶絶するほどのカッコ良さ。特に大楠道代との"眼球舐め"に関しては確実に自分の中にある何らかの扉が開いたような気がする笑。マジで。

とにかく一度足を踏み入れば最後、二度と元に戻ってくれないような美の蠱惑に囚われてしまう、まさに鈴木清順のアヴァンギャルドなエロティシズムに陶酔する唯一無二の一本でした。

正直ストーリーは有って無いようなもんだし、訳が分からない展開を144分ぶっ続けで描くもんだから途中流石にダルい瞬間が何度かあったが、やはりあの眼前に広がるこの世のものとは思えぬ映像の連続に圧倒されまくりでしたし、夢か現か定かでない幻想をあそこまで映画という要素を用いて還元できる鈴木清順の技量にただただ驚きが隠せない。

まさに生が"死"であり、死が"生"である。自分でも何を言ってるのか分からないが、とりあえずこの眩暈を引き起こすほど妖しくも恐ろしい作品を映画館でヴァージンを卒業できた事が何よりも喜ばしいし、残り2作品を上映期間内に何としてでも観たい気持ちでいっぱいです😌...