ゲイリーゲイリー

エターナル・サンシャインのゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)
3.5
誰かを愛してしまったが故に味わう苦悩。
その苦悩から逃れるため記憶を消すことを選択したジョエルとクレメンタイン。
ジョエルの脳内世界や時間軸をズラしたストーリー構成等、その独自性と創造力ばかりが注目されがちの作品だが、本作最大の魅力はオリジナリティに満ち溢れた見せ方によって恋愛の酸いも甘いも全てを描いた点にあると思う。

恋愛特有の高揚感と喪失感。
どちらかに比重を置くのではなく、その両面を描くことによりジョエルの苦悩がありありと伝わってくる。
耐え難い喪失感と苦悩に襲われ、こんな感情になるぐらいなら全てを無かったことにしようと記憶除去を選択した彼らを責めることは誰にも出来ない。

喪失感や苦悩から解放されるための記憶除去の筈が、ジョエルはクレメンタインとの記憶を手放したくないと脳内世界で抵抗を試みる。
この辛いと分かっていながらも手放すことができない、矛盾した感情の根底にある想い。
これこそが、相手への本当の気持ちであり愛であることにジョエルは気づいていく。

本作は、記憶が消えようと何度傷つこうと待ち受ける未来がハッピーエンドではなかろうと、それでも人を愛するという選択は尊く価値あるものだと訴えかけてくる。
クレメンタインを筆頭に魅力溢れるキャラクターと独自のストーリー展開により提示される本作のメッセージ性は、ラブロマンス作品が苦手な私にも深く突き刺さった。