ある意味ホラー。
肝座り過ぎなマッチ工場勤務の女。労働三部作独特の空気感。
あの仕事は何なのだろう。ほとんど機械的な作業の中に、彼女の自我は介在し得ない。男を、愛を求めるも、それは達成されない。幸せという感情が存在しない彼女の周りは、全てがピリついている。『家族ゲーム』みたいな。
彼女の表情は終始曇っていたが、復讐の瞬間だけは少し笑みを浮かべた気がする。ただ、女も女で自分勝手なのだ。あれは本気の愛ではなかった。勝手に勘違いして、振られて、暴徒化したのだ。それに、序盤には男を求めていたのに、終盤には寄ってきた男を始末する。かなりの狂人ぶりだ。
『枯れ葉』にかなり近い構成であるとは感じた。同時代に巻き起こる、天安門事件のニュースが映され、当時の観客に対し、現在進行形で起きている出来事であるかのような感覚を与えた。今観ると、そういう時間的同一性は感じられないのだが、その手法というか、作品に対するカウリスマキの姿勢が堅持され、最新作においても用いられたのだ、ということが知れて良かった。
きっかけは無慈悲な暴力とか、圧倒的な不幸とか。カウリスマキの映画観が少しだけ分かったような。そんな気がする。
映像0.8,音声0.7,ストーリー0.6,俳優0.7,その他0.3