ひでやん

マッチ工場の少女のひでやんのレビュー・感想・評価

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
4.0
工場の製造ラインを延々と映し続けるオープニング。

何を作っているんでしょうか?というクイズのようにひたすら続く描写…そっかマッチだ。「マッチ工場の少女」だもんね…て、全然少女じゃねえ!

カティ・オウティネンは悪くない。悪いのはアッキーだ。

労働者三部作のラストを飾るのは常連の彼女。仕事を終え、市電に乗り、買い物をして家に帰る。母と義父の夕飯を作り、3人で食事。

む…無言!オープニングから10分過ぎても台詞がない!無言の役者がおしゃべりなテレビを見ている。

ディスコで誰にも声をかけてもらえなかった孤独なイリス。給料日に買った赤いドレスで再びディスコへ。

地味な服を着た冴えない女が無味乾燥とした日々を送っていた。そんな彼女がお洒落して恋をする。

電話を待ちわびるイリスが可愛い。恋をすると女は綺麗になる。しかし男にとっては一夜の遊びと分かるのが辛い。

惨めで哀れ、それがカウリスマキの定番。悲劇に次ぐ悲劇、まっさかさまに堕ちてdesire …。

電話を待つ彼女と手紙を書く彼女はまるで表情が違う。無表情にうっすら浮かんだ幸福が消え、不幸のどん底という顔になっている。流石の演技力だ。

深緑のボストンバッグ。緑のビリヤード台と赤い玉、青いセーター、深紅のソファと白い壁、その色合いがたまらなく良かった。

吐き気、急ブレーキ、薬局と、容赦なくマイナスの磁場へ引きずり込まれ、終盤はもう悪い予感しかしなかった。

救いのない復讐より希望の光がほしかったな…。
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