Melko

モーターサイクル・ダイアリーズのMelkoのレビュー・感想・評価

3.6
しっとり、深く考えさせられる映画だった。随分前から気になってたけど、ようやく。

モーターサイクルダイアリーズなのに、結構序盤でモーターサイクルと別れを告げる…
フーセル(ゲバラ:エルネスト)と、アルベルトの、半年に渡る12000キロの旅。

チェ・ゲバラのことは、名前は知ってても、どういう人生を歩んだかは知らない。
社会主義のことも、漠然と、「みんな平等」というふわっとしたイメージしか知らない。

長い長い旅の中で、彼らが見たもの、出会った人、聞いたこと、感じたこと。
そのどれもが濃すぎて、一生の中で、これだけかけがえのない体験ができるなんて。。
最初の方は、ピュアで頑固気味のフーセルと、口先ばかり達者で中身がペラペラ気味のアルベルトのコンビに、若干イライラ。
行く先々でトラブルばかり。若者の、中身のないロードトリップだなあと思っていたけど、中盤を過ぎて、南米の様々な国が抱える問題、ハンセン病患者と触れ合い、内容が一気に重みを出してくる。

映画の中に出てきた印象的な言葉
「我々は少数ゆえに、分裂してはならない。団結せよ。」
「無駄な国籍によって国が分けられている」
「南米大陸は一つの混血民族で形成されている」

同じ南米人なのに、国をまたけばそれぞれが抱えた問題が見えてくる。
貧困、飢え、教育の行き渡らなさ。
それぞれに、それぞれの問題があり、それでも生きていかなければならない。

みんな同じ人間なのに、病気だからと遠ざけられたり、救われなかったり、何故なんだ?という疑問と憤りに突き動かされて、ゲバラは革命家になったのではないか。

この時代の、一期一会の貴重さ。
人との出会いの尊さ、別れの寂しさも、痛いほど伝わってきて、、

あんなに最初頼りなかったアルベルトが、壮絶な旅を経て、最後ゲバラと別れる時の表情。本当に、「大人」になった、ということなんだなと思った。
30を控えたアルベルトは、大人になりかけていて、引くところは引く、周りを見ている。だから、時々ナヨっとも見えていた。
対するゲバラはまだ24になりたて。
まだまだ闘志や情熱に溢れ、良くも悪くも世間をあまり知らない。
多くの人との出会いを経て、自分の中に生まれた思いを信じ、突き進みたいと思った彼は、まだ「子供」。
でも、この体験があったからこそ、キューバ革命が起きたのだと思うと、出会いって大事にしないとなあ、と思った。

時々カットインする、こっちを見ている人物たちがモノクロで映し出される様子が、
リアリティを突きつけられて、印象的だった。

まあ、ガエルガルシアベルナルが、とりあえず美しかった。
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