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早池峰の賦
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『早池峰の賦』に投稿された感想・評価

煙
4.1
クライマックスは正月。特別なことをやっているわけではないのに深い感動がある。
4.0
【失われゆく文化の熱気を収めて】
シネマヴェーラにて開催中の羽田澄子特集最大の目玉といえよう『早池峰の賦』を観た。昨年、国立映画アーカイブで上映されていたものの、シフトの都合で観に行けなかった作品だ。彼女の映画は配信もDVD化もされていないことが多く、一度逃すと取り返しのつかない監督の筆頭なので足を運んでみた。シネマヴェーラにしては異様なまでに空いていたが、素晴らしいドキュメンタリーであった。

本作は文化人類学ドキュメンタリーとして岩手にある早池峰山で生まれた山伏神楽を追っている。かつて、山伏神楽は、村から村へ整備されていない道を数か月にわたり練り歩きながら巡業していたという。道が整備されたため、芸人たちは車で村を渡り演目を行う。この伝統芸能は都市部にも知れ渡っており、銀座へ出張することもある。だが、本作では縮小していく村の翳りから山伏神楽がなくなってしまうのではといった危惧を基に制作されている節があり、文化の継承、衰退にフォーカスが当たっている。幸いにも、現役の芸人の息子たちが意欲的に継承しようとしている様を描きつつも、彼ら/彼女らが生業としているタバコの原材料である南部葉の栽培は過剰生産によって今年が最後の栽培になるかもしれないと語られる。恐らく映画は、山伏神楽の衰退を撮ろうとしていたのだと思うが、南部葉の栽培が深刻だったため、後半では栽培文化のアーカイブに注力されていく。幸いにも調べてみたら、本作から約半世紀近くたった2026年時点でも山伏神楽は残っていたものの、こうしたドキュメンタリーでアーカイブしていく活動の重要性を痛感したのであった。
すえ
4.7
記録

【神楽】

瀬川順一特集@シネ・ヌーヴォ、フィルムで。これも目玉のひとつに数えていたが間違いではなかった、傑作。

我々が近代化によって主体を確立してゆく過程、信仰の世俗化によって失ってしまったものが確かに息づいていた。権現舞を拝む老女の顔面に宿る信仰、あの表情が映画を決定づけていると思う。

また、変わるもの/変わらないものの両方が描写されていた。変わらないものは、上に挙げたような信仰の形態と伝統の継承(世代とともに表現に多少の変化はあると考えられるが)であり、変わるものは例えば南部葉(からバーレー種)、住居(藁葺きから近代的家屋)などである。近代化の影響を確かに受けながらも、その上で適応してゆく早池峰の人々がいる。

早池峰神楽における身体というものは、おそらく西洋の舞踊や日本の舞踏とは全く異なるもので、神を表現する媒体として機能しているのではないか。身体表現の目的として舞があるのではなく、舞それ自身が祈祷という役割を備えているものでもあり、神を身に宿す(降ろす)ためのものであると考えられる。そうして媒介として機能する舞の身体は、たとえ世代や人が変遷したとしても本質的には変わらない。

村民で継承されてゆく神楽は、常に村民という批評家の目に晒されている。子供から大人まで、彼らはなべて批評の視線を芸に向けており、それゆえに芸が鋭く洗練されてゆく。

都市の人間の眼差しは、神楽を異化し特殊な芸能と認識してしまうが、早池峰の人々にとってそれは特殊でも何でもない。特別ではあることには変わりはないが、神楽は彼ら彼女らの生とともにあり、物心つく前から内面化されていると考えられる。

終盤の雪山の肌を捉えたショット群が素晴らしい(あれは瀬川順一だろう)、雪の表面を撫ぜる風、その空気が本来見えないはずなのにも関わらず見えてしまう驚き。その数ショットはほとんど、彼自身影響を受けたフラハティ映画のショットと同じ感覚を宿している。瀬川自身がお気に入りらしい「エビのシッポ」という岩に形成された氷のショットが殊に素晴らしい。一瞬光が差し、雪肌を煌めかせたかと思うと、直ぐに翳りが戻ってくる。この刹那の陽光、これ以上の光線を映画で見たことがないかもしれない。

とにかく素晴らしい映画だった、こんな稀な機会をつくっていただけたことに感謝。ドキュメンタリーのことは考え続けなければならない。

2026,33本目(劇場30本目)2/5 シネ・ヌーヴォ

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