tjZero

ワイルドバンチ/オリジナル・ディレクターズ・カットのtjZeroのレビュー・感想・評価

4.7
カッコいい、ではなく、
カッコい~い。

燃える、ではなく、
燃える~ゥ。

① 迫真性
上記の”~”は、サム・ペキンパー監督作の特徴である、”スローモーション撮影”を指しています。
激烈なアクションが引き延ばされ、たっぷりと興奮できる。
ただそれは、見せ場を”盛って”いるだけの効果ではありません。
我々の日常でも、交通事故に遭ったり、目撃したりした際、現実が止まったかのようにスローに見える時があるでしょう。
人間って、劇的な場面に立ち会うと、時間が引き延ばされたように感じるのかもしれない。
ペキンパー監督作は、そうした臨場感の表現に長けています。
それは、同じくスローモーションを得意とするジョン・ウー監督作とは異なっています。
ウーの場合、あくまでも見た目の華麗さ優先…観客席から舞台の歌舞伎役者の殺陣をウットリと見上げているような感じ。
一方、ペキンパーは迫真性が肝…観客も舞台に上がって役者と一緒に殴り合いのケンカをしている、みたいな感じです。

② 男たちの絆
あとイイのが、主人公たちが行動を起こす動機が、『七人の侍』や『荒野の七人』の”農民のため”みたいな大義ではなく、金銭欲や仲間の復讐のため、といった個人的なモノであること。
そして、その仲間同士の絆の表現も、本作のウィスキーを回し飲みするシーンのように、さりげなく、それでいてお互いを認め合っているのが確かに伝わる手応えがあります。

この①、②の理由によって、ペキンパー作は”カッコい~い”し、”燃える~ゥ”のです。
泥臭くても、無様でも、男たちが這いつくばるように闘う姿に、ギラリとした迫力を感じずにはいられません。
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