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切られ与三郎のtjZeroのレビュー・感想・評価

切られ与三郎(1960年製作の映画)
4.2
家督相続争いから逃れ、房総に流れてきた三味線弾き(市川雷蔵)。性悪女に騙されたり、殺人の濡れ衣を着せられたりしてお尋ね者となる。愛する妹の危機を救うため、江戸に舞い戻る与三郎だったが…。
伊藤大輔監督は”移動大好き”と呼ばれる位、横方向の左右のキャメラ・ワークが特徴的。
本作はそれに加え、縦方向(奥行き)の演出も見事だなあ、と感心させられました。
夜の場面での闇、室内場面での陰などの黒味を効果的に使って、奥行きのある画面を作り出しています。
”画”だけでなく、”音”の方も奥行きがあります。画面の前方で男女がささやき合っている後方で、お囃子の音が静かに流れていたりして、耳にも奥深い響き。
こうして、画面の左右に前後、そして音の強弱まで巧く使って、立体感のある作品を作り上げてくれています。
3Dや4Dの映像、多チャンネルの音響といったテクノロジーが無くても、豊かな映画は立派に成立します。知恵や工夫がいっぱいに詰まった、こうしたクラシックがとても好きです。
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