紫のみなと

魅せられての紫のみなとのレビュー・感想・評価

魅せられて(1996年製作の映画)
3.2
公開当時はリブ・タイラーの汚れのない美しさに腰を抜かしましたが、何十年かぶりに2回目を観ると、期待していた感動の再来はやってこなかった。

なんというか、リブ・タイラーって演技があんまり上手くないんですね。ずっと同じ顔、同じ表情のアップで、この設定の主人公に必要である肝心な「聡明さ」が感じられない。確かにもちろん非常に美しいのですが…。

リブ・タイラーの美しさだけでは2時間もたないし、でもそれだけの映画ではなかったはず。ベルトルッチ監督ですから。なのに、他に何を表したかったのか、考えてもハテナ。父親探しや、亡くなった母への憧憬など、それらしいテーマはある。それから要するに、リブ・タイラーのバージニティー、それこそが見どころなんでしょうが、癌末期のジェレミー・アイアンズの寿命が延びる的な、リブ・タイラーが彼の喜びの対象になるところとかも、あんまりぐっとこない。
いけないことに、途中からもう退屈になってしまって…。
このラストもいっさいときめかず、このラストのためにこの2時間があったのかと思うと、「ドリーマーズ」や、「シェルタリングスカイ」や、「暗殺の森」と同じ監督の作品とは思えませんでした。
致命的なのは、タイラーが着る、母親の形見のドレス。ヒラヒラのフラワープリントでとてつもなくダサい。びっくりしました。ここへきてリブ・タイラーにまるで似合ってないドレスを纏わせるなんて。
かつてエヴァ・グリーンが、デブラ・ウインガーが、ドミニク・サンダが、スクリーン上で放った圧倒的なクールさ、スタイリングの斬新さは何年経っても色褪せません。
ヒロイン独特の美と、映画の美とを追求された監督のはずなのに…。

この映画で初めて知ったレイチェル・ワイズは脇役ながら光っていて、そういえばこの映画から私はレイチェル・ワイズを好きになったのだと思い出しました。28年後の今も第一線で輝きを放っている、骨のある女優で憧れます。