紫のみなと

ニンフォマニアック Vol.1の紫のみなとのレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)
-
シャルロットとジェーンの母子では私は圧倒的にジェーンが好きですが、やはりシャルロットも好きなので、シャルロットがこれだけ頑張ってるなら観ないといけない、だなんて勝手に思いつつ、よほど気力がある時じゃないと観れないだろうと敬遠していた本作。

シャルロットのファンの方々はどんな風に感じられたのかな?というのが第一の感想。
ジェーンも大概な映画に出てましたけど、シャルロットぉ!…と目が点になる女優魂。

思っていたより面白かったのは、シャルロット演じる色情狂のジョーと、ジョーの物語の聞き手セリグマンとの会話の応酬とでも言いますか、とんでもない体験を語るジョーに対し、セリグマンが小難しい解釈で返すやり取りが定期的に挟まれるのおかげで本作が性行為の連続とはなってないため観やすく、また語る本人の表情や語り口からも感じられる部分が多かったからです。

一気にVol.1と2を観てしまったので、どこまでが1だったのか定かでないんですが、Vol.1で印象的だったのはクリスチャン・スレーター演じるジョーの父。
クリスチャン・スレーター、若い頃好きだったし、出演しているとは知らなかったので驚きました。
スレーター自身の浮き沈みの多かった半生を思うとき、いい表情をする俳優になったなあ、いや、あの頃のままだなあ等と、感慨にふけりましたし、繰り返し出てくるこのお父さんとジョーの回想は非常に切なく、とても懐かしいような気持ちにさせられます。
それからユマ・サーマン、本作は度々恐ろしいシーンが出てきますが、ユマの出演シーンもかなり怖い。ある意味目を覆います。

シャルロットは歳をとったし、ジョーの若い頃を演じるステイシー・マーティンの瑞々しい裸体と比べるのは、
ーでも多くの人は比べますよねーフェアじゃないと思ったりもしつつ、でもやっぱりシャルロットは特別な存在だなと、少し受け口の横顔を観ていてつくづく感じました。
わたしは悪い人間、とつぶやくジョー。
シャルロットの持つあの大きな眼の無垢さが、どんな熱演をしても色情狂にまるで見えない。
しかし、シャルロットはシャルロットでしかあり得ないと思ってしまう反面、ジョーの纏う孤独はシャルロット・ゲンズブールという女優そのものにも見える。

とは言え、そもそも私に色情狂の知識がないのでこの物語をどう捉えていいのか分からない面がありました。

色情狂は依存症なのか、障害なのか、先天性のように思うけどある程度生育歴が関与するのか?単なる体質と言っていいのか?
カウンセラーが、ジョーに色情狂ではなく、依存症なのだと認識させようとするシーンもあります。治療するためには、病気だと認めさせないといけないから。一時は言うことを聞き、性行為を断つジョーでしたが、あっという間に全てを元に戻してしまう。

あれだけ無作為に性行為を繰り返していたらもっと早い段階で感染症や性病に罹患しているはずだけど、監督はそういうところを描きたい訳ではないだろうから、この堂々たるタイトルを冠する本作の、愛することと感じることのバランスが取れない1人の女性を描いた監督の意図も結局、よく分からないままでしたが…もうこれ、観たまんまでいいのかな?