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マクベスのericoのレビュー・感想・評価

マクベス(1948年製作の映画)
3.8
マクベスという題材の持つ演劇性を十二分に活かしたオーソン・ウェルズの快作。70年近く前の映画でも、意外と素直に楽しめる。明と暗、動と静のコントラストの強烈さ、計算しつくされた画面の構成、無駄のない展開。そのへんが今でも古臭くない。

荘厳な音楽が鳴り響いたと思えば、ふと次の瞬間に静寂が訪れ、そこに佇むマクベスに悲運を予感する。破滅への恐怖から彼は民への支配をより強固なものにしていき、それが結局は破滅を招くというアイロニーが、この物語の面白味なんだろう。原作を大昔に読んだときは、マクベスという野心家の悲劇だなぁとだけ思っていたけれど、彼の権力への欲望は先天的に備わったものというよりは、彼の環境に置かれたとき「やむを得ず」取った選択肢だったのでは、とこの映画を見てはじめて思い至った。

冒頭で彼の悲劇はすでに予言されてしまっていて結末も分かりきってるんだけど、それでも引き込まれるのは、彼の精神が闇に堕ちる過程こそが、わたしたちにとってスリリングだからなんだろう。

シネマヴェーラ
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