Mokkung

ディア・ドクターのMokkungのレビュー・感想・評価

ディア・ドクター(2009年製作の映画)
4.0
 この映画の特徴の一つは、医療の描写がリアルだということです。僕もこのような山間部や島の僻地医療に携わったことがあるのですが、診療所とそこでやっている診療内容、往診の様子、患者さんの雰囲気などは、かなり現実の僻地医療の現場に近いです。事前に実際の僻地医療を取材して作られたようですが、かなり丁寧に取材したのではないかと思います。そしてキャスティングと役作りもリアリティを後押ししています。


 緊張性気胸になった患者が診療所へ運ばれてくるシーンがあります。このシーンも実際の疾患の再現が上手くできていました。この映画での緊張性気胸の演技は結構リアルだなと思いました(処置後の回復が早すぎな印象でしたが・・・)。拡張した頚静脈もちゃんと写ってるし、素晴らしい!


 どうしても医療関係者は映画の医療関連シーンを見ると、「そうじゃないんだけどなー」と思うことが多いです。しかしこのように本作は、僻地医療の描かれ方から、実際の疾患の描写まで、きっちり作り込まれている映画でした。


 本作は医師である伊野が患者に頼まれて、ある嘘をつくことから始まる一連の出来事が、話の推進力になっています。ネタバレを避けて詳細は言いませんが、伊野がつく嘘は到底許されるものではありません。はっきり言って、医師としては絶対にやってはいけないことをしています。絶対にダメなんですが、しかしその嘘をつく行動が、必ずしも人を不幸にしたとは言い切れないのがこの映画のキモでしょう。前述のとおり、病める人に向き合うことの本質が嘘によってもあぶり出されて、伊野の嘘に巻き込まれた人たちもその片鱗を味わうのです。そしてそれを味わった人々を捜査のため聴取するうちに、本質に気づき始めるのが松重豊演じる波多野刑事です。冒頭から中盤にかけての彼の表情や態度が、終盤には変わっていきます。その意味では、彼が第二の主人公と言っていいでしょう。彼にフォーカスして観てみると、また違う味わいになりそうです。


詳しくはこちらに書きました↓
https://mokkung.tumblr.com/post/640209294448607232/
Mokkung

Mokkung