Mokkung

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれからのMokkungのレビュー・感想・評価

5.0
映画の冒頭では、「愛とは完全性に対する欲望と追求である」という、古代ギリシャの哲学者プラトンの『饗宴』における愛を解説した表現の引用フレーズが映し出されるとおり、本作は片割れである主人公たちを通して、誰かを愛するとはどういうことか、というかなり大きなテーマを描こうとしています。

ただし、この映画のおもしろいところは、「愛とは完全性に対する欲望と追求である」というプラトンの言葉を掲げながら、その言葉のとおりに着地しない点です。

本作は最終的に完全性に対する欲望は描かれないし、追求することをやめているように見えます。結局3人は結ばれることはないし、むしろ自分のジェンダーを自覚したり、好きという感情を整理できなかったりで、その上次第にお互いの気持ちをさらけ出し、傷ついていきます。それでも相手を愛する気持ちや、愛の形は確かに成立していることも実感させられます。それは恋愛感情や肉体を求めるという点だけでなく、友情や家族愛なども含めた広い意味の愛についてもです。古代ギリシャ人が想定していたような完全な愛の形など無く、他者を愛することってすんごく複雑で大変なことなんだということを、この映画は言いたいのだと僕は考えます。



実はこの映画の真のテーマは愛の形ではないと思っています。実際、映画の冒頭でエリーが語るナレーションでは以下のように述べられています。

「In case you haven’t guessed… this is not a love story. (一応言っとくけど・・・これはラブ・ストーリーじゃないからね)」

この映画の真のテーマ、それは“本当の自分を受け入れること、そしてありのままの他者を受け入れること”だと思います。


🍍🦉🐛



詳しくは下記に記事を書きましたので、読んでもらえると嬉しいです。
https://mokkung.tumblr.com/post/627533462727016448/
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