Mokkung

同級生マイナスのMokkungのレビュー・感想・評価

同級生マイナス(2020年製作の映画)
4.2
 飛べると思っていたら、大人になって実は自分はただのニワトリだったと気付かされた男たちの、可笑しくも切ない、ユーモアに溢れた台湾発コメディ映画。

 本作は全体的に現実から乖離しそうな映像表現を介して、監督のユニークな感性と登場人物への温かい視点が感じられるんですよね。ラストの映画と現実の境が崩れるようなメタフィクション演出は笑えるけど、監督の同級生たちへの強い思いも垣間見える演出でした。ちょいちょい挟む軽いギャグシーンもクスっと笑えて面白い。ホアン・シンヤオ監督、かなりボンクラな匂いがプンプンします。

 一番強烈だったのは、“とある日本の有名人”が登場する場面ですね。いきなり本人役で登場するので本当にびっくりして、開いた口が塞がらなかったです。ちゃんと日本語で喋ります。気になる方は是非ご覧ください。度肝を抜かれました。

 中年クライシスという言い方はあんまり適切じゃないかもしれないですが、本作は青春時代を引きずりつつ大人になってしまった男たちが、中年を迎えるに当たり次第に自分の人生の限界を感じ始める物語です。そのあたりも非常に胸に響いた要素です。

 とくにチェンとカンという二人の人物にすごく共感しました。カンの高個性からの憧れ女性に対する想いは、花束みたいな恋ではなく、枯れ木に咲いた一輪の花のような恋でした。思い出は思い出のまま、自分の脳内にそっとしまっておくほうが良いこともあるということです。
 
 最後のナレーションでこんなフレーズがあります

自分の背中には翼があり、努力すれば高く飛べると信じていたのだ。けれど40歳も過ぎれば徐々に気づく。“自分はただのニワトリだった”と・・・。

 これは決して諦めに振り切った投げやりな意味合いでは無いと思います。高く飛べないことが人生の意味を低めるわけではない、ニワトリだと気づくことは一つのステップであり、その先も自分なりの素敵な人生は続くんですよという想いが背後にあると僕は感じています。



 今後も何度と無く思い出したり、見返すであろう作品になりました。観てよかった、ありがとう!


詳しくはこちらに書きました。
https://mokkung.tumblr.com/post/643718773033058304/
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