Mokkung

ザ・ファイブ・ブラッズのMokkungのレビュー・感想・評価

ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年製作の映画)
4.2
ベトナム戦争を扱った作品は数多くありますが、本作がこれまでの作品と異なる特別な点は、“現在”の視点からベトナム戦争を描いているという点です。まさに2020年現在の視点で描かれていて、かつてベトナム戦争に従軍した仲間たちがお爺ちゃんになって再び現在のベトナムを訪れることで、自分たちにとってのベトナム戦争を振り返り、自分たちが背負った過去を清算するという、これまでにはなかったスタイルのベトナム戦争映画です。

また米国人の視点以外にも、ベトナム人、更にはフランス人の視点も散りばめていることも素晴らしい。ベトナム戦争以後も現在まで残る問題点を描きつつ、決して米国的な視点だけで終始しない、いろんな立場の人間の視点が巧みに組み込まれている点は、過去作とことなる素晴らしい点だと僕は思いました。

主人公一団は皆黒人で、米国のために従軍しながら、本国では差別を受けてきた人たちです。ベトナム戦争従軍当時、隊のリーダーだったのがチャドウィック・ボーズマン演じるノーマンです。ノーマンはカリスマ的で、戦闘経験が豊富で賢く、黒人の部隊員たちに黒人史などを教える指導者的な立場でもあり、仲間たちから慕われていました。そんな彼がなぜ死んでしまったのか、彼の遺骨は見つかるのか、そのあたりは映画を見てみてください。

この映画を撮影している当時、ノーマン役のチャドウィック・ボーズマンはすでに癌に対して化学療法を行いながら、その合間に撮影をこなしていたと思われます。そしておそらく彼は残された人生がそう長く無いであろうことも、知らされていたのではないかと思います。彼はきっと、限られた時間の中で、自分がこの役を演じることで、後世の人たちに大きなメッセージを残すことができると考え、頑張って出演したのではないかと僕は感じていますし、それを思うと胸が熱くなり込み上げてくるものがありました。今作は彼が死ぬ前に映画を通して体現したメッセージなのかなと思います。



詳しくはこちらに記載しました。興味ある方はぜひお読みください。
https://mokkung.tumblr.com/post/628236311001726977/
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