いつか、八月の終わりに観ようと決めていた映画。
岬の家に住む老姉妹は8月に海に現れる鯨を何十年も待ち続けている。人生の短さに対し時の流れは永遠であり、去っていった愛する人々との思い出が色褪せてしまうことが、近い内に訪れる死の予感と共に、時折2人の顔を曇らせる。それでも鯨を待つ2人。
季節の変わり目を運んでくる鯨を生きている限り待つ2人。
老いても丁寧に毎日を生きる二人の姿はちっともみすぼらしくない。
薔薇の香りを嗅ぎ、長い白髪を梳き、客を迎える為に化粧をし、穏やかな一日を丁寧に生きていく。
心に孤独と不安を抱えつつも、人生の終わりを慎ましく、決して投げやりにならず、
人生は意地悪ね、とぼやきながら。
春に桜が咲けば
また来年も見ようと
誰もが目を輝かせ微笑むように
生きている限り八月の鯨を岬で待ち続ける二人の姿は
人生を肯定する美しさがある。
どれほど月日が流れても、ずっとずっと。