滝和也

APPLESEED アップルシードの滝和也のレビュー・感想・評価

APPLESEED アップルシード(2004年製作の映画)
3.5
人口が減少している
日本の現状…。
既にあらゆるインフラ
やサービスにおいて
破綻の芽は萌芽し始めた。

そして
人口知能、クローンが
実施可能となった今に
改めてこの作品に価値を
見出す…。

「APPLESEED アップルシード」

1980年代ブレードランナーに始まるサイバーパンクの影響を最も受けたのは、アトムに始まる柔軟なSF的な思考を持つ日本漫画界だった…。アキラの大友克洋そして攻殻機動隊の士郎政宗。その二代巨頭の一角、士郎政宗の本当の代表作がアップルシードである…。

実はこちらも80s傑作選なんです。こちらの原作本は中々レアで田舎町では売っておらず、初めて注文して取り寄せました(^^) その期待を裏切らない面白さ、絵の緻密さ、話の難解さに興奮したものです。

世界大戦は起こってしまった。世界を廃墟に変えた後、世界を収めたのは先進都市、オリュンポス。巨大人口知能ガイア、そしてヒト、感情を抑制されたヒトクローンであるバイオロイドな三者がバランスを取りながら平和を維持する理想社会。だが…そのバランスはアルテミスの天秤がごとく脆いものだった…。戦地から救い出された女戦士デュナンは嘗ての恋人でサイボーグ化したブリアレイオスと共にその危機に巻き込まれて行く…。

戦士デュナンを狂言回し且つ主人公とし、理想郷とそこに生まれた歪み、歪みを正すもの達が織りなすミステリ仕掛けのSFサスペンス・アクションです。

元々、原作自体が語るべき場所を語らず、難解であり、主人公達も中心の様で周りを回っている様な創りのため、もやっとするんですが、今作では、デュナンを芯として進みますので比較的わかりやすい(^^) 見ている私達がヒト故に途中敵味方の感覚がこんがらがる可能性もありますが(笑) ブレードランナー的なモノの考え方は参考になりますが、落し穴でもあり、明らかに影響されていますので(笑) サスペンスミステリとしては面白いと思いますよ。

この作品の先進性は今だからこそ、更に強く感じますね。この世界観ではヒトの戦争により、人口は減退しており、オリュンポスのみが文化的な生活が可能。ヒトは争いを止めません…。クローンであるバイオロイドと人工知能があって初めて形成されている…。これを当世日本に当てはめれば、人口減少が始まり、インフラ維持のため移民を必要としており、また科学技術でそれをカバーしようとしている。移民はヒトの争いを起こしますからね、必ず。ヒトはそれ程利口ではないから。人工知能がまず動き出していますし、クローンも可能になりつつある。まぁ許可はされてませんが。ほぼ80年代に書かれた作品通りになりつつあるんです。

この作品の低評価の原因を見ると、難解さより、15年前に作られたCGアニメであるという点の様です。プレステ2レベルと言う話もありますが、あまりゲームCGに詳しくない私には関係ないようです(笑) まぁ確かにヒト、人物描写は違和感があるため、現実の俳優さんたちの演技と比べたらいけないんですが(笑)

ただメカ描写は悪くない。デュナンらが装着するパワードスーツであるランドメイトや多脚砲台、オスプレイ型輸送機などメカ好きにはたまらないですし、戦闘アクションも楽しめました(^^)

そしてヘカトンケイル級サイボーグのブリアレイオスもまた、声の小杉十郎太さんの渋みが出たキャラクターであり、メカ描写も良いですね。更にキャラクターは主人公デュナンをサイボーグとなりながらも、愛し抜く漢ですから大好きなんですよ(^^)

久しぶりにみたのですが、世相が変わり始め、少子化、人口減少問題を目の当たりにしている職業であるため、見方が少し変わりまして評価を上げてます。サイバーパンクがお好きな方は是非ご覧いただければと思います(^^)
滝和也

滝和也