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未完の対局のHKのレビュー・感想・評価

未完の対局(1982年製作の映画)
4.8
日中国交正常化10周年を記念して製作された日中合作映画。監督は「新幹線大爆破」「キミよ憤怒の河を渉れ」などの佐藤純彌監督。

日本と中国という国境を越えて、二人の囲碁棋士が互いのプライドをかけて切磋琢磨する熱い囲碁スポーツ映画!
後の「ヒカルの碁」などにも影響を与えたとも言われる熱いバトル展開が繰り広げられる!
洗練されたタクティクスと頭脳戦!果たしてどちらが制すか!
素晴らしき囲碁青春バトル映画!







…嘘です(お許しください。)
中国の名の知れた棋士である男が日中の国交が悪化する前に、赴任してきた同じく日本の棋士学校の男のスカウトにより、自分の息子を日本に預けることを決意する。

しかし、日中戦争が勃発、南京大虐殺、盧溝橋事件など日本と中国の国交の雲行が怪しくなるにつれ、二人の家族の間にも不安と猜疑心が募っていく。二人の純粋な囲碁に対する気持ちは彼らの家族とともに無惨にも潰されていく。

これ、私の大好きな救いようのない鬱要素たっぷりの内容です。時代的にはちょうど「鬼が来た!」と同じ時代背景ぐらいなのでしょうか。当時の日本軍のいかれ具合がこれほどまでに出ていた作品は珍しいですね。

しかし可哀想なのは、易山の家族ですよ。この映画で、中国人の棋士の家族は全員ぶっ殺されます。しかもあっけなく無惨に。そのカラッとしたドライな殺し方が余計に易山の悲惨な運命を物語っていますね。

そりゃああんな状況で日本軍側から碁を打てなんて言われたら、あんな態度とりますよ。あのシーンの血の演出っぷりもゴアでしたからね。囲碁の打ち合いで血が吹き飛びますからね。

一方、三國連太郎の方も、流石に中国の方とまではいかなくとも教え子のアミンをあんな形で失って娘が精神崩壊すればあんな荒みますわな。

当時、南京大虐殺が本当にあったかどうか定かではありませんが、人間誰だって一度権力を持ってしまうと何をするか分からなくなるということですよ。二人の棋士の純粋な囲碁への愛をこれでもかというくらいにずたずたにしますからね。軍事政権なんて糞だと肝に銘じたほうがいいかもしれません。

速くDVD出してほしいです。VHSしかないのが悲しいですね。
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