このレビューはネタバレを含みます
年が明けても指輪の魔力に魅入られて中つ国の旅に赴く。
装身具を身に付ける華奢を潔しとしないミニマリスト達の指輪捨ての旅の激しさは前作よりさらにヒートアップ。
前作で散り散りになった仲間たちは各々の道を行きながら来るべき冥王サウロンとの決戦に赴くための力を蓄える。
灰色から白色になった者、しゃべる木と友達になった者、一国を奸計の魔の手から救った者、前指輪の所有者と思惑を交錯させながら次第に心を蝕まれていく者。
時間をたっぷり使いながら、群雄割拠と将が立つさまを描き出す。
各ストーリーが少しずつ絡み合い、敵将サルマン率いる一軍との戦いに向けて物語は加速。
そして迎える一戦。
自軍が構え、敵軍を迎え撃つ籠城戦の形だ。
敵軍との武力差にじわじわと攻城を許す劣勢。
あわや落城かと思われたその時、離散していた仲間たちが集う。
それぞれが勢力を拡大していた結果、戦況は好転。
先ほどまで、
「いや〜、僕ら争いとかあんま好きじゃないから。平和の方が良くない?」
と、賢者然と悟りすましていたしゃべる木が獅子奮迅の働き。
自然破壊ダメ!
これには敵将サルマンもあわあわ。
めちゃダサい。
一方、フロドを襲う心の戦いに不穏な影がさす。
ゆっくりと、しかし確実に心を蝕まれていることを自覚したフロドは自身の窮状を悟る。
「もうダメだ…」
捨て鉢気味の言葉に傍らのサムが語りかける。
曇りなき眼で、毅然と。
「この世には命を賭けて戦うに足る尊いものがあるんです。」
ヘミングウェイが"誰がために鐘は鳴る"で残した「この世は美しい、戦う価値がある」に匹敵する名言。
マジでどれだけ徳高いんだサム!
世界中がサムの偉大さに気づいたところで完結編へ続く。