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クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!のHKのレビュー・感想・評価

3.6
クレヨンしんちゃん映画シリーズ第14作目。監督は同じくムトウユージ。キャストは矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、こおろぎさとみ、渡辺明乃などなど

いつもの日常を送っていた双葉幼稚園だが、どうもよしなが先生の様子がおかしい。昨日までは幼稚園のお披露目会でサンバを出すのに否定的だったのに急にOKを出した。寧ろノリノリで恥じらうこともなくサンバを踊っている。春日部市民の様子が一斉に可笑しくなってきたのだった。

日常に忍び込む恐怖を描くと言う点では、初期の名作、ヘンダーランドを倣ったのかもしれませんね。個人的には、そこまで悪い作品とも思えません。寧ろ前作では無理やり泣かせに行ったのに対し、今作はそこまで感動に持っていかなかったのは素直に誉めたい。

今作ではボディースナッチャーとか、怪奇大作戦らに対するリスペクトがよく見られる。やはりムトウユージさんも、それ相応に旧作にたいするリスペクトをしっかりと見せているところが好感持てますね。

この映画では、本格的にホラー演出をするという新境地に達するのですが、まあ子供向けでありながらも、その枠を超えるような演出をしてくることこの上ない。そっくりさんの顔が化け物に豹変する様は怖すぎる。

小さい頃に劇場で見たのですが、風間ママの口が割れるシーンは個人的にすごいトラウマ。あの後に画面を直視することが難しくなりましたね。それは今でも変わりません。やはりあそこのショットは怖くて見れない。ホラーとか大嫌いなもんでね。

今作のヒロイン枠は、ジャクリーン。声優さんは渡辺明乃さん。一人称が僕ということで有名。ハスキーな声ながら、一騎当千とかの呂布奉先とかの声とかも出せるんだからやはりエロい。この映画でも、凛々しくクールながらも終盤で色々とやってくれるのでたまらないキャラですね。

ただし、映画の中で評価できるのはホラー描写が満載された前半のみ、後半からの急なギャグテイスト全開と作風変更は物語が失速した一番の理由である。

ギャグテイストに振り切ることは大切なんですけど、やはりそこはもうちょっとこの映画の趣旨に合わせてもうちょっとシリアスに寄ったうえで見せたほうが良かったかもしれませんよ。それこそバタリアン的なものにしたほうがもっとよかったかもしれません。

どうもギャグに踏み切っても、ハッピーエンドに終わってしまう所がやはり子供向けだからこそやってしまった甘えに見えてしまって釈然としませんね。

あと、サンバの描写の適当さというのもやはりリアリズムに凝っていた原監督とは全然比べ物にならないくらいに劣化してしまったような気がします。そこはちょっとなんか酷かったような気がしますよ。

この時期は、原監督からのイメージの脱却の為に色々と試行錯誤を施していた時期なのでしょうね。だからこそムトウユージ監督はそれまでの作風を踏襲しながらも、敢えて型に入らないような作風にしようとしていた。

それがから回ってしまったかのような気がします。そして、今作のギャグ描写とホラー描写が受けが悪かったというのを理由に次回作ではまた感動路線に戻ってしまうのですが、個人的には今まででみたクレしん映画の中で一位二位を争う程の駄作を作ってしまいます。

それに比べれば、今作はホラー演出の点では子供向けだからと言って子供だましにならないように徹底して怖がらせようとしたのは評価したいと思います。

個人的には他にも偽物みさえがエクソシストのような動きをするところ、ミッチーとヨシリンがジープを追い回す所とかが、B級感溢れながらも怖くてとても良かったですね。小さい頃は本当にトラウマものでしたよ。

いずれにしても見れて良かったと思います。
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