マヒロ

フライトナイトのマヒロのレビュー・感想・評価

フライトナイト(1985年製作の映画)
4.0
テレビのホラー映画番組『フライトナイト』をイチャつきながら流し見していたカップルのうちの男・チャーリーは、ふと窓の外に目をやると、二人の隣人が棺のようなものを運んでいるのを発見する。何か怪しいものを感じ取ったチャーリーが隣の家を監視していると、その家に入っていった女性が後日バラバラ死体で見つかったと報道されたうえ、隣人がホラー映画のヴァンパイアのように女性の首筋に噛み付こうとしている場面を目撃してしまい、彼の疑いは確信に変わるが……というお話。

劇中でもセリフで示唆されているが、マスクを被った殺人鬼の映画が全盛だった頃に敢えてクラシックな吸血鬼ものに挑んだ作品で、招き入れないと家に入れないとか十字架に弱いとか、やたらと多い弱点はそのままで現代にヴァンパイアが蘇ったらどうなるか、というような作り。
といってもホラー感は薄くて、全体的に80年代らしいノンビリした雰囲気の漂う、コメディに近いような感じ。

例によって、ホラーオタクの主人公がいくら訴えようとも警察や家族、友人などの周囲の人は全く信じようとせず、一か八か「ヴァンパイアハンター」を名乗る前述のホラー番組のホストであるピーター・ビンセント(ピーター・カッシングとヴィンセント・プライスが由来なんだろうな)に直談判しにいくも、視聴率低下からクビになっていた彼は自暴自棄になっており話を聞かない。更に、追い詰められたチャーリーが自分の正体に勘付いていることを知ったヴァンパイアたちは彼の命を狙い始めて、いよいよ八方塞がりになってくる。

面白いのが、登場人物の中で一番成長を見せるのが主人公のチャーリー青年ではなくておっさんのビンセントであるというところで、チャーリーの妄言をなんとかしようとした友人に金で雇われ、嫌々ヴァンパイアの館に行くことになるんだけど、そこから起こる出来事が徐々に彼の気持ちを変えていき、最終的には役柄だけの偽物だったヴァンパイアハンターという肩書きが本物になってしまうという大活躍。
映画オタクとその映画を作ってきた男の二人が、現実に現れた虚構であったはずの存在を自分達の知識で打ち倒すというのはなかなかアツいものがある。

特撮にもわりかし気合が入っていて、怪物の形態に変身するシーンや死に際の過剰なまでのドロドロエフェクトなど(この時、チャーリーとビンセントが呑気にポカンと死に様を眺めているのがなんか笑える)、結構凄い。

コメディではありながらも、ヴァンパイアの変な捻くれた目線で生態を笑い飛ばすのではなくて、真っ当な吸血鬼映画として、上手いこと現代版としてアップデートして描いているところも好感持てる。
何とは無しに見始めた映画だったけど、思わぬ掘り出し物だったかも。

(2019.91)
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