マヒロ

アメリカン・フィクションのマヒロのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
2.5
(2024.32)
黒人作家のモンク(ジェフリー・ライト)はなかなか自身の作品が認めらないばかりか「もっと黒人らしい作品を書け」と言われ、ヤケクソになってテンプレのような黒人文化をなぞった作品を作り上げて提出する。モンクとしては皮肉のつもりだったその作品は、編集者に大ウケしてしまいトントン拍子に出版に漕ぎ着けてしまう……というお話。

黒人文化を尊重しようとするあまり、ステレオタイプな決めつけみたいなものに陥ってしまっている白人たちを描いたブラックコメディ。最近のハリウッドは一時期のポリコレ最盛期の反動からか、リベラルを皮肉るようなノリの作品が多くなっている印象だが、今作はまさにそういう流れで生まれた作品と言えて、これがアカデミー脚本賞を取ったのは象徴的だなと思った。
基本的には業界人も一般人も等しくバカにしたような話だが、正直もうちょっとエッジの聞いた悪意を期待していたところがあり、「ハリボテの黒人らしさが過剰に持ち上げられてしまう」というあらすじから想像できるような展開以上のことは起きず、今一つインパクトに欠けるように思えた。
メインの話はむしろモンクの私生活の方にあり、度重なる不幸や思うように好きな作品が描けないフラストレーション、家族との不和などのマイナスな出来事がモンクを地味に追い詰めていく様が描かれている。ただ、それで困ってばかりと言われるとそうでもなくモンクはモンクでだいぶ問題のある人間であり、逆に他人を嫌な気持ちにさせるような描写も多いのでお互い様ではある。完全な善人はほとんど出てこないという点もなかなかシニカルではあるが、だから面白いかと言われるとそうでもなく、ジンワリと嫌な気分になっただけで終わった。

ザッと見た感じそれなりに評価は高めみたいだが、個人的には刺さる部分のない作品だった。
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