滝和也

七人の侍の滝和也のレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
5.0
迫る四十騎の野武士!
向かうは、七人。
そして農民達…。

「全てはこの一撃で決まる!」

明けましておめでとうございます!今年も黒澤作品でスタートです!邦画最高峰、全世界に衝撃を持って迎えられた黒澤映画の金字塔…

「七人の侍」

完璧。精密、精緻、究極のエンターテイメントであり、ヒューマニズムを兼ね備えた、今尚、超えることを許さない邦画最高傑作。

語るべき術を持たず、全てが語り尽くされている作品。どのシーン、シークエンスにも隙がない最高の脚本、そしてカメラワーク、演出、演技。200分を超える長編にして飽きる事もなく、画面に釘付けになりますね。

野伏に狙われた村、村人たちは侍を雇う。無償の戦に賛同する七人の侍たち。村に着いた侍達は百姓たちを組織し、準備を始める…。

七人が揃うまでに1時間、準備と先制の夜襲で1時間。そして決戦で1時間。存分に尺を使って丁寧に書き込まれた説得力。そして観衆を飽きさせない細かなシークエンス作り。七人の侍の個性を存分に書き込み、百姓たちの書き込み、壮絶なる決戦へと向かう。正にカタルシスを感じない人はいない劇的かつ圧巻のラストへ。

アクションの凄さ、エンタメとリアリズムの極地である、かの有名な1tを超える雨を降らせる泥の海で戦うあのラスト。このシーンが代表とされていますが、他のどのシーンも凄まじい。例えば本物の家を遠景でありながらも燃やしてしまう中での劇的なシーン。

「こいつは俺だー!」

若き三船敏郎演じる野生児菊千代が子供を抱きながら上げる咆哮と被さる炎。更にこのシーンの凄さは、一言で彼の素性を説明してしまうんですね。全てにいえるのですが、丁寧な造りでも、説明し過ぎず諄くないんです。語りすぎてもいない。

コメディリリーフであり、狂言回しであり、農民たちと侍を繋ぐキーマンである菊千代を三船敏郎は実に自然に感情を爆発させた演技を見せてくれます。豪快極まる中に繊細さを併せ持つ難役に素晴らしい演技で応えています。

でも私が七人の中で今回一番好きなのは志村喬演じる冷静沈着なリーダー島田官兵衛ですね。その軍略、人心掌握術、武技と全てを兼ね備えたリーダー。こんな方と仕事はしたいですよ(笑)弓を打つ姿の美しさは流石ですよ。この年はゴジラにも山根博士役で出演し、正に当たり年ですよね。マグニフィセント7のデンゼル・ワシントンが演じた役はユル・ブリンナーより志村喬に近い気がしますね。

そして宮口精二演じるニヒルな中に優しさを併せ持つ凄腕の剣客久蔵。演出と演技で凄腕に見えますが、実は全く得意分野でなかったと言う逸話を聞いて驚きました。千秋実演じるツッコミ役の平八、稲葉義男演じる副将格の五郎兵衛、官兵衛の元家来七郎次、加藤大介。マスコット役で恋愛要員勝四郎に若き木村功。勝四郎を除く皆が挟持を持ち、勇ましく、カッコイイ(^^) 彼らが農民達と織りなすドラマ部分がまた素晴らしいんですよね。中盤はこれで引っ張りますからね。

騎馬武者との戦が中心になるのですが、全てが生身のアクションなのでその迫力たるや並でなく、やはり生身にはCGは勝てないんだろうなと感じますね。ベン・ハーがリメイクされ大ゴケしたのも最近ですが、それと同じなんでしょうね。

手間暇かけて作られたホンモノにはやはり勝てない。また黒澤明と言う天才監督の凄まじい拘りがあってこそだとは思いますが…。何度見ても飽きない。やはり邦画いや全映画の最高峰だと思います。
滝和也

滝和也