ひでやん

白いリボンのひでやんのネタバレレビュー・内容・結末

白いリボン(2009年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

抑圧された心に芽生える悪意。

第一次世界大戦を直前にしたドイツの小さな村を舞台に、次々に起こる不可解な事件と、不穏な空気に包まれた村人達を描いたクライム・ミステリー。

村人の相関図を頭に入れるのに集中しないと、この子どこの家の子?と混乱するほど登場人物が多い。別の町から赴任してきた「よそ者」の教師が奇妙な事件の数々を語るが、その語り手が事件の犯人も動機も分からないため、真相はぼやけたままだった。モヤッとして後味が悪いので、自分なりに考えてみた。

大人たちは村の権力者である男爵に支配され、子供たちはプロテスタントの厳格な教えや威厳のある父に従う。権力者から大人へ、大人から子供へと及ぶ絶対的支配。強い立場から弱い立場へと流れるその力は子供たちで行き場をなくす。鬱積した感情のはけ口は、障害のある弱き者へ。抑圧された感情は嫉妬となり、男爵家の息子へ。私の世話が必要だと分からせるために助産婦がドクターに怪我をさせ、権力に抗えない大人がこっそり火を放つ。推理のいくつかは当たっているかもしれないし、全部違うかもしれない。そういう事にしておけばスッキリ。

支配する者への悪意と嫉妬、子供の無垢と邪心、事件に対する子供の関心と大人の無関心、そして村に満ちる恐怖心と猜疑心。モノクロの映像は季節の移ろいを感じさせ、雪景色が美しくもあり、物悲しくもあった。

純真無垢であることを忘れないように腕に巻かれた白いリボン。無垢の「印」を無理矢理付けられても、子供は怒られないように無垢を演じるだけ。白を強いられりゃ黒くもなるだろう。
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