ひろ

少年は残酷な弓を射るのひろのレビュー・感想・評価

少年は残酷な弓を射る(2011年製作の映画)
3.4
ライオネル・シュライヴァーによる小説を、リン・ラムジーが監督・脚本を務めて製作された2011年のイギリス映画

カンヌ国際映画祭で高い評価を得たというこの作品。冒頭から打ちひしがれる女性の姿。そして彼女の回想へ進み、少しずつ真相が説き明かされてゆく。時系列を巧みに入れ替えることで、現在の重さが引き立っている。仕事も恋も希望に満ちていた女性と母親の愛を拒み続ける少年の物語。

この映画の肝は製作総指揮も務めているエヴァ役のティルダ・スウィントンの演技だろう。もはや、世界三大映画祭で審査員を務めるほどの権威ある女優なので、演技が上手いのは当たり前だ。そういう立場になっても挑戦的な演技をすることが素晴らしいのだ。このエヴァの葛藤と絶望を表現した演技は、彼女のキャリアの中でも記憶に残るものだ。

夫役のジョン・C・ライリーは控え目の演技だったけど、母親と息子の物語だから、それを邪魔しないのも名脇役というものだ。ケヴィンを演じたエズラ・ミラー。中性的な魅力を持つ俳優で、本人も男女問わず愛した人を受け入れるというスタンスみたいだから、そういう精神性が役に活きている。これから活躍しそうな俳優だ。

レディオヘッドの楽曲が使われてると思ったら、映画音楽を担当しているのがメンバーのジョニー・グリーンウッドだった。バンドサウンドを創り出す中心人物だし、すでに「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」や「ノルウェイの森」などの映画音楽で高い評価を得ていたので、ジョニー・グリーンウッドに任せておけば心配ない。この残酷で受け入れ難い物語を、ジョニー・グリーンウッドの音楽と共に見つめるのも楽しみ方のひとつだろう。
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